部下が上司におごる 中国の変わった商習慣

写真拡大

先行きが見えにくいといわれる現代。稼いだお金については「守る」という意識がどうしても強く働く。つまり「貯蓄」である。

しかし、考えてみてほしい。お金とはそれ自体が目的ではなく、何かを成し遂げるための「道具」でしかない。稼いだお金を守ることしか頭にないと、どうしてもお金を稼ぐことが目的化しやすい。

これと対照的なのが「華僑」だ。
ビジネスの世界で名を馳せる彼らのお金の使い方には「守る」という意識は薄く、むしろ「お金は正しく使うことで増えていく」と考えている節さえある。

このアグレッシブなお金への意識について『世界最強! 華僑のお金術 お金を増やす「使い方」の極意』(集英社刊)の著者、大城太氏と、『面接の達人』など数多くのベストセラーを持つ作家、中谷彰宏氏が対談を行った。

■「お金」には「稼ぐ技術」と「使う技術」がある
中谷:この本でまずおもしろいのは、「お金を使う技術」という言葉を使っているところですよね。「稼ぐ技術」とはよく言うけど「使う技術」とはあまり言わない。

お金を使うということはほとんどの人にとって「娯楽」であって、そこに技術という発想はない。そもそもお金について、多くの日本人は全般的に技術という発想が希薄だと思う。

大城:ありがとうございます。たしかに日本人はお金を扱うことを技術として捉えることは少ないですね。

中谷:お金を稼ぐということで言えば、稼げない人はよく「元手がない」ということを言い訳にします。「華僑=元々お金持ち」というイメージがあるわけだけど、実際はそんなことはなくて、元手がないところからスタートしてお金持ちになる人も多いです。

だから、元手がないからお金持ちになれないというのは間違いなんだけど、そういう言い訳を言う人の共通点として、不思議と「好きなこと」をやろうとするんです。

大城:「好きなことで生きていきたい」というのは、先生への相談や質問にも多いでしょうね。

中谷:この本にも書いてある「稼ぎ方はどうでもいい」ということですね。好きなことを仕事にしようと探している人というのは、稼ぎ方にまでこだわってしまっているわけだけど、そうなるとお金というのはなかなか稼げない。

僕の実家は僕が小さい頃から、それこそ「華僑の商法」や、「ユダヤの商法」といったことを叩き込むんです。世の中の体制がどう変わろうが、財産を没収されようが生き延びていけるように、ということで。それで最終的に行き着くのは「稼ぎ方にはこだわらない方がいい」ということです。

それと「お金の話」は「時間の話」でもあります。この対談を読んでいる人の中には、もしかしたらまだ残業して残業代が入ることでやっと生活ができているという人もいるかもしれない。でも、これに甘んじていると、いつまでも抜け出せなくなってしまう。

大城:残業している時間で未来のためにできることがある、ということですね。

中谷:そう。残業代は自分の未来のお金をもらっているだけで、その時間に勉強することもできるし、事業を興すことだってできるかもしれない。残業は未来の可能性をお金に変えているとも言えます。

残業は基本的に1時間いくらという風に計算するから「時給労働」なんです。だから仕事の密度を薄めれば薄めるほど稼げてしまうわけだけど、薄めるにも限度があるから、一定以上は稼げない。

笑ってしまうのは、「お金持ちになりたい」という人に「いくら稼ぎたいの?」と聞くと「やっぱ時給いくら以上ですかね」って答える人がいるんですよ。お金持ちになりたかったら早く時給労働を抜け出して、人がやらないこと、人ができないことをやってお金を稼いでいかないといけないのに。

会社ということでいうと、「中国では部下が上司におごる」というのはこの本で初めて知りました。日本で取り入れるとなると、メンツの問題が出てくる。これはどうしたらいいんだろう。

大城:そこはもう、「普段お世話になっているお返しで、ごちそうさせてください」ですよね。上司のメンツは守らないといけません。

中谷:いかにスマートにおごれるか、というのも一つの力量ですね。単にお金を出せばいいわけではなくて、目上の人に対してメンツを潰すことなく、感じ悪くならないようにしないといけないわけだから。

それと、上司に限らず、自分よりお金を持っている人の行きつけの店を知るっていうのも大切なこと。それも、一度行ってみるだけじゃなくて、その場に馴染むようになるまで通ってみるというのは大事な先行投資です。

「ちょっといい店で食事をする」というだけだと時間とお金の無駄だけど、それをワンランク上の人と知り合うための費用だとか、勉強代にする意識は持っておくべきです。
(後編に続く)