上宮太子vs山田
投手・森田輝(上宮太子)
初回だけで投じた球数は約50球。いきなり4つの四球を与えてしまった山田の先発左腕・村井響(3年)は試合開始早々に5点を失った。2回は三者凡退に抑え立ち直ったかに見えたが、3回も2者連続で歩かせピンチを招き、4回にも先頭打者への四球から失点。四球でランナーをためてしまった5回にもタイムリーと押し出しで2点を失う。
明らかにストレートが高く浮く、変化球がワンバウンドになるということではない。「調子は悪くなかったです」と話すようにある程度は狙ったコースに投げられたものの、前半だけで10四球を与えてしまっては0点に抑えることは難しい。その中でも金子恭平監督が反省点に挙げたのが1つ目の四球。
初回、上宮太子の1番・折出智勇(2年)にフルカウントからライト前に運ばれると2番・田北一博(2年)に対して3ボール。1球ストライクを取ったものの結局歩かせピンチを広げてしまう。「ノーアウト一塁からの四球で流れが決まってしまった。自分達から崩れないようにと話したんですけど」
しかし金子監督は上宮太子の4番・末武大虎(3年)、5番・木戸幸大(3年)に連続タイムリーを打たれても、押し出しでリードを広げられても守備のタイムを使わない。「夏に向けてどうするのか、というところですよね。自分で考えて自立した選手の野球が一番強いと思っているので」
そして、この春から山田に赴任してきたばかりの新監督はエース・村井響の成長に期待をかけていた。「いつも取れてるコースのストライクが中々決まらずしんどかったと思いますけど、我慢強く投げてくれました。今のチームは彼次第なので、球数多かったのはわかってたんですけど最後まで行かせました」ブルペンでは小崎豊稔(3年)もスタンバイしていたが9点を失いながらも村井響に最後までマウンドを守らせた。
1年秋からベンチ入りし昨春にも背番号1をつけた大黒柱は「組み立てを変えた7回は変化球中心に打たせて三者凡退に抑えられました。強いチームはストレートをファールにされたんで、変化球を低めに集められるように練習していきたいです」と夏へ向けて気持ちを切り替えていた。
投手・村井響(山田)
山田の好投手からはそう簡単に点が取れない、そう踏んだ上宮太子の日野利久監督は先発投手を当初予定していた背番号20の住本匠海(3年)からエースの森田輝(2年)に変更した。線は細いがキレのある球を投げ込む右のオーバースローを日野監督は高く評価している。「預かった中では1番の投手。バッターや状況に応じて投げられる」球速や奪三振数などと違い数字に表れにくい部分だが森田はゲームメイク能力に長け、この日の試合でも立ち上がりを3人で片づけると「調子は良かったです。初回は変化球もまっすぐも浮き気味だったんですけど、修正出来てコースに決まって良かったです」と快調なピッチングを続け5回二死まで無安打投球。点差が開いていたこともあり参考記録ながら大記録もありえるかと思われた中盤に初安打を打たれたがそれでも動揺した様子は全く見せない。
6回に二死満塁としこの日最大のピンチを迎えるが山田の5番・柿本蓮(3年)を2球で追い込むと最後はセカンドゴロに仕留めピンチ脱出。7回を4安打無失点に抑えチームを勝利に導いた。
選抜で優勝を飾った智辯学園との練習試合でも1-4で敗れはしたが、「バット振れてるんで負けずに投げようと思って、4番をまっすぐで三振に取ったり自分の中で1番良いピッチングが出来ました」と強力打線を相手に8回途中まで2失点と好投した。昨秋の練習試合でも近畿ベスト4の明石商に土をつけている。選抜出場時の明石商の戦績は50勝4敗1分で、黒星を喫した他の3校は明徳義塾、関西、大阪桐蔭といずれ劣らぬ全国区の強豪のみ。昨秋は初戦敗退の上宮太子だがこの春、格上から金星を奪う準備は出来ている。
(取材・写真=小中 翔太)
注目記事・2016年度 春季高校野球大会特集