強風下の乱打戦を成田が制する

1番ライト・寺元啓介

  午前中から吹いていた風はだんだん強くなり、フライ処理がむずかしくなっていたが、この強風とともに成田vs専大松戸の一戦は大荒れの試合となった。

 1回表、成田は中橋奎太(3年)が左前安打を放ち、2番大矢 一史(3年)の犠打を成功し、二死二塁から番酒巻翔(3年)がレフトフェンス直撃の二塁打でが成田が先制する。

 だが専大松戸も反撃開始。成田の先発・鈴木 凌賀(3年)は立ち上がりから、常時135キロ前後で、最速138キロを計測するなど、ストレートの勢いは中々のものだった。しかしその鈴木の出鼻をくじいたのが1番寺元 啓介(3年)だった。甘く入ったボールを捉えいきなりレフトスタンドへ同点本塁打。この本塁打によってリズムが狂った鈴木は、135キロ前後のストレートがコーナーを外れ、四球を連発するなど、勢いに乗りにくい投球。その後、安打、2四球で無死満塁となって、5番小田川来夢(3年)の押し出し死球で勝ち越しに成功。さらに6番淺尾聖作(2年)の追加点となる犠飛で3対1とすると、その後はミス、四球などが絡んで、打者13人の攻めで、計7点を取った専大松戸。普通ならば、この点差ならば試合の主導権を握ったかに思えるが、成田も負けじと反撃に乗り出す。

 3回表、尾身 健太朗(3年)の中前安打から始まり、中橋が痛烈な左前安打、さらに2番大矢の送りバントが丸茂の内野安打となり無死満塁のチャンスを作り、3番花嶋 悠吏(3年)は遊ゴロ。この間に2つの敵失があり、2点を返すと、さらに押し出し四球や、専大松戸のバッテリーミス、8番猪俣拓海(2年)の犠飛などでこの回、6点を返し、6対7の1点差に迫り、早くも試合を振り出しに戻し、予想が難しい試合内容となった。

2番手・川上(専大松戸)

そして5回表、専大松戸は2番手・川上鳳之(2年)が勢いに乗る成田打線を抑えにかかるが、止められない。川上は中々の好投手で、コンパクトながら背中側までテイクバックを持っていき、スリークォーター気味の腕の振りから打者寄りでリリースする鋭い腕の振りを見せる右の好投手。

 立ち上がり、制球にばらつきがあったが、ストレート自体にはかなりの勢いがあり、コンスタントに135キロ〜130キロ後半を計測し、最速は142キロを計測。こんな投手がいるのかと驚きを隠せず、来年の千葉県を代表する投手として期待しながら見ていたが、経験不足なところがあり、投球がまとまらない。ボールは全体的に高く、そこを成田打線が見逃さなかった。

 5回表、一死から千葉英和戦で本塁打を打っている岡本佳大(3年)の中超え適時三塁打から始まり、柳澤 健斗(3年)の死球で、無死一、三塁として、柳澤が盗塁を仕掛け、7番大川直也(3年)が三振に倒れたが、猪俣の遊撃内野安打で同点に追いつくと、9番尾身 健太朗(3年)のセンターフェンス直撃となる適時三塁打で2点勝ち越した成田。尾身は140キロ前後の速球を投げ込む右の本格派だが、この試合、130キロ〜136キロのストレートとスライダー、カーブを投げ込む投球。この投手の良さは、要所でぐっと力のあるストレートを投げ込むことができるところ。

 しかし甘く入ったところを痛打されてしまうのが課題で、5回裏、一死一、三塁から9番伊藤 彰伸(3年)の犠飛、1番寺元が右中間を破る適時三塁打を打たれ同点に追いつかれてしまう。

 とはいえ、同点に持ち込んだ伊藤、寺元は1年生から出場している選手だが、だいぶ成長した。 伊藤は守備の上手さが光った選手だったが、年々、打撃が向上し、昨夏の千葉大会決勝戦では芸術的ともいえるインコース打ちで逆転となる適時打を打って話題になったが、この試合でも巧みな打撃を見せ、さらには、遊撃守備もだんだん磨きがかかっており、深い位置からすぐに追いついてすぐに送球に移行してアウトにするなど、ゴロ捕球では格段の進化を見せていた。

 1回裏に本塁打を打った寺元もどちらかというと守備重視の選手で1年秋は華奢だったが、この1年半でだいぶ体つきが逞しくなり、スクエアスタンスで構え、しっかりと投手にタイミングを合わせて打ち返すことができるようになった。スイングも鋭さが増し、芯で捉えればスタンドインするだけではなく逆方向にも強い当たりが打てるようになった。初回の7点はこの男の一打から始まったといっても過言ではない。

力投を見せた尾身(成田)

 こうして5回まで9対9の試合は最後までもつれる展開となり、7回表に成田は猪俣の本塁打で勝ち越しに成功すると、8回裏、専大松戸は無死から2番須永隼人(3年)の安打から始まると、天野泰(3年)の適時二塁打で同点。10対10のまま9回表に。

最終回に成田は4番酒巻 翔(3年)の死球、5番岡本が再び二塁打を放ち、無死二、三塁のチャンスを作ると、6番柳澤の勝ち越し適時打で11対10とすると、一死満塁からここまで力投の9番尾身が2点適時打。さらに二死三塁から2番大矢の適時打で14対10とした成田。 9回裏、専大松戸の3番天野に3ランを浴び、14対13と1点差に迫られるが、最後は尾身が4番丸茂 弘汰をストレートで空振り三振に打ち取り熱戦に終止符を打った。

 この試合、風が吹き荒れた中、ミスも多く、両チームにとって課題が残る内容だったが、冷静に見ると、選手たちのポテンシャルの高さは千葉県内でもトップレベルに入るチームであることは分かった。このまま夏までに純粋に伸びていけば、上位に入り込んでいくチームであることは間違いない。春の時点で思いっきり悪いところが出たのは収穫だとポジティブに捉えて、夏へ向けて着実に高めてほしい。

 勝利した成田だが、とにかく野手のレベルが高い。昨年から主将の花嶋が気になっていたが、5番岡本は非常に良い選手。専大松戸の川上の140キロ台のストレートを力負けせず、2本の長打を放ったパンチ力ある打撃は見事としかいいようがない。去年から甘く入れば、スタンドインにもっていくパワーを持っていた選手だったが、高いレベル相手にもその実力ができるまでになった。成田は伝統的に左の好打者は存在するが、まだ次のステージを意識できる打者が現れた。またそれ以外の打者も全体的に伸びており、他校にとっては脅威になりそうだ。 2006年以来の春の4強入りを目指し、次は秋準優勝の千葉明徳と戦う。

注目記事・2016年度 春季高校野球大会特集