広島の里山の課題解決に取り組む首都圏の若者たち (画像:広島県提供)

瀬戸内海に面し、宮島のイメージなどもあって「海辺の県」という印象が強い広島県。ところが県内23市町村のうち実に19市町、県面積の7割が中山間地域にあたる。一方2010年の国勢調査によるとその人口は県全体の1割ほどで、全国に比べ集落の小規模化や高齢化が特に進んでいる。県では2013年、「中山間地域振興条例」を制定し、県民、市町、県が相互に連携しながらの地域振興に力を入れている。

その取り組みの一つとして2016年2月27日、地域貢献に高い意欲を持つ首都圏の若者が、広島県の中山間地域の課題解決に取り組む「ひろしま里山ウェーブ拡大プロジェクト」の最終発表会が東京都内で行われた。

「ソトコト」編集長らが指導

このプロジェクトは2015年9月にスタートし、広島県の6つの中山間地域(府中市・三次市・安芸太田町・神石高原町・世羅町・大崎上島町)が抱える課題について、10チームに分かれた受講者が、雑誌「ソトコト」編集長の指出一正さんをはじめとしたメンターの指導を受けながら、グループワークや広島での現地実習を通して考え、課題解決のための企画案を作り出すというものだ。

受講者は若者を中心とした20代〜50代以上の幅広い年齢層の男女43名。首都圏で行われた4回の講義・グループワークと、現地での3日間の実習を経て、それぞれのチームが実践プランを練った。

 

都内で行われた「ひろしま里山ウェーブ拡大プロジェクト」の最終発表会(画像:広島県提供)

発表会では、安芸太田町の「地域の宝と人をつなぐプロデューサー」という課題に対し、フォトブックを作成し、町に住む人々が自分の町を新たな視点で見るきっかけにするというプランがあがった。ほかにも、6つの市町で唯一の離島、大崎上島町の「大崎上島サポーターを拡大してほしい」という課題には、地元の高校生がメインプレーヤーとなって、地域活性化プランを練り、コンテストで選ばれたプランを次年度に実施するというプランが提案された。この仕組みを高校の活動に組み込み毎年実施することで、地域活性の取り組みを継続的に行っていこうというものだ。この他にも6つの課題に対して多様なアイデアが提案され、会場は活気に溢れていた。

現地実習以外にも、プロジェクト期間中に個人で再度現地を訪れた受講者もいたほど、各地域の課題に対して、受講者が真剣に取り組んでいるのが印象的だった。今後も受講者が自主的にワークショップなどのイベントを開催する予定で、学生NPOを設立したチームもある。県の担当者によると、プロジェクトの受講者のうち5名がUターンでの移住を希望者している。また、地域でローカルベーンチャーに取り組み、地域の課題や可能性に働きかける活動の先に移住する「ソーシャル・ターン」を検討している人もいるという。

 

大崎上島町で行われた現地実習(画像:広島県提供)

また、受け入れる市町のモチベーションも高い。今回の6つの地域は、県の呼びかけに対し自ら手を挙げ参加をしたという。プロジェクトは、首都圏から若者を受け入れ、自らも首都圏に赴くなど、時間とコストをかけてでも人を呼びたい、という市町の熱意があって実現した。

来年度も、新たな受講生によるプロジェクトが行われる予定で、すでにいくつかの自治体が参加する方針だという。