何が変わった?

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■増税時期変更に伴い、適用期限が延長される!

遡ること6年前。景気刺激策の一環として、環境に優しいグリーン家電を購入すると現金が給付される「家電エコポイント」が導入された。

期間中は大型テレビや冷蔵庫が飛ぶように売れたが、完全に需要の先食いとなり、期間終了後は反動で市場は縮小。家電量販店では、エコポイントでもらえる現金以上の大幅値引きが行われた。そして今、同じことが住宅市場で起きている。

前々回、消費税が引き上げられた1997年。新設住宅着工件数は前年比マイナス15.6%という激しい落ち込みを見せた。そのため、今回は景気の腰折れを防ぐために、国は増税スケジュールに合わせて、「住宅ローン減税の延長」「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長・拡充」「すまい給付金の導入」という3点セットを打ち出した。

住宅ローン減税」は、ローンを組んで住宅購入した人の金利負担を軽減するのが目的。年末のローン残高(または住宅の取得価格)の1%を10年間、所得税と住民税から控除してもらえる。これまで最高200万円だった控除枠を、増税に合わせて2014年4月〜19年6月は最大400万円に拡大した(エコ住宅は、300万円から500万円に拡大)。

終了予定だった「住宅等取得資金に係る贈与税の非課税措置」も19年6月まで延長。非課税枠は現行の最大1000万円から、消費税が10%になる17年4月に最大2500万円に拡大する(エコ住宅は1500万円から3000万円に拡大)。

「すまい給付金」は、消費税増税後に住宅購入した人に現金を給付するというもの。利用できるのは、14年4月〜19年6月までに自分が住む家を購入し、かつ収入が一定額以下の人だ。例えばローンを組んで購入する場合、4人家族(夫婦と中学生以下の子ども2人)で年収510万円以下が目安。17年4月以降は775万円以下。給付額は消費税8%の間は最大30万円で、消費税が10%になる17年4月以降は最大50万円。年収の少ない人ほど給付額が多くなる仕組みになっている。

こうした優遇制度を作ったものの、14年の新設住宅着工件数は前年比9.0%減。2年ぶりの90万戸割れとなった。当然、住宅価格の下落にもつながっており、売れ残った物件を捌くために、大幅な値引きが行われているのが実態だ。

駆け込みニーズの反動で起こる増税後の住宅価格の下落に加えて、前述した3つの優遇制度を利用すれば、あわてて住宅購入せず、むしろ8%への増税後に購入をしたほうが得だったというケースも多い。

消費税が10%になる17年4月に近づくと、巷には再び増税狂想曲が流れ出すだろう。だが、住宅は人生最大の買い物だ。消費税アップといった一点にとらわれることなく、利用できる住宅ローン控除やすまい給付金や不動産の需給環境などもトータルで考えたいもの。そして、十分な返済計画をたてたうえで、慎重に買い時を見極めたい。

※図版は吉澤大氏への取材をもとに編集部で作成

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相続税、住宅ローンのプロフェッショナル●吉澤 大
税理士、中小企業診断士。國學院大學大学院博士前期課程修了後、会計士事務所勤務などを経て、吉澤税務会計事務所代表。著書に『2時間で丸わかり 不動産の税金の基本を学ぶ』『ケチな社長はなぜお金を残せないのか?』。

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(早川幸子=構成)