学生の窓口編集部

写真拡大

冷え性に悩む人にとって、ホットドリンクは内臓から温まるように思い、冷える季節には欠かせないものでしょう。ただし、「レンジでチンした、お湯を使ったからと言って、体を温めるドリンクであるとは限りません。温かくても、体を冷やすドリンクはあるのです」と話すのは、管理栄養士で糖尿病専門クリニックにて患者さんの食事指導にあたる西山和子さん。詳しいお話を聞きました。

■コーヒーの飲み過ぎは体を冷やす

体を冷やすドリンクについて、西山さんは次のように話します。

「冷えの程度や原因は、人それぞれです。冷え対策として、ドリンクの原材料が持つ利尿作用や細胞の浸透圧への影響、自律神経へのリラックス効果から考え、体を冷やすタイプのドリンクかどうかを判断します。水分代謝に関わる栄養素で、カリウムとナトリウムのバランス、排尿を促す作用のあるカフェインは『冷え』に影響しやすいと考えられます。

野菜や果物のドリンクの中で、カリウムの多い食材かどうかを見分ける際、食材の旬、原産地に注目するといいでしょう。例えば、トマトやスイカやキュウリなどの『夏が旬の野菜』や、パイナップルやマンゴーなどの『温暖な地域で生育する食材』、また、夏野菜でなくても『淡色野菜』といわれる色の薄い野菜は、水分を多く含みます。それに、『砂糖や塩を多く使う飲み物』はのどが渇きやすく、水分が欲しくなります。

一方、タンパク質やビタミン、ミネラルが豊富、また発酵している食材は、体を温める傾向にあります」

ここで、西山さんに具体例を挙げてもらいましょう。

(1)コーヒー

利尿作用があるカフェインが含まれています。排尿と同時に熱も体外に出すため、一時的に体温が下がります。また、コーヒー豆の原産地は熱帯地域です。注意したいのは、「ホットコーヒーでも結果的に体を冷やすことになる」ということです。薄めのコーヒーに、牛乳(タンパク質)を少し入れて飲むと改善されます。

(2)緑茶

こちらも利尿作用があるカフェインが含まれるので、コーヒーと同じように、温かいお茶であっても排尿時に熱が奪われます。また、抹茶が使われているお茶はカリウムを多く含むので、塩分の多い食事と一緒にとると、塩分を体外に出そうとする働きで、さらにトイレが近くなります。紅茶も緑茶と同様ですから、飲み過ぎには気を付けましょう。紅茶の場合はミルクティーにすると、タンパク質がとれて改善されます。

(3)炭酸飲料

砂糖、特に「ブドウ糖」は血糖値を急上昇させ、のどが渇き、さらに水分をとりたくなります。すると多量の水分を摂取することになって体を冷やす方へ作用すると考えられるため、糖分が多く含まれる炭酸飲料にも気を付けましょう。

(4)ビール

原料の麦にはカリウムが豊富に含まれているため、塩分の多い食事とともに多量に飲むと体温が下がりやすいと考えられます。また、炭酸はのどごしが良くて冷たさを感じにくいうえに、ビールはキンキンに冷やして飲むことが多いので、アルコールの作用でしばらくは体は温まりますが、最終的に冷やす方へ働きかけます。お酒では、焼酎のお湯割りがお勧めです。

ただし、甘すぎる、また度数が高い種類は生活習慣病のもとになりやすいので、適量を心がけましょう。

(5)フルーツジュース

健康に良いと考えてたくさん飲む人がいますが、血糖値を上げやすく、のどの渇きからさらに水分が欲しくなり、水分を多量にとりがちになります。1日にコップ1杯程度と、適量を心がけましょう。

西山さんは、体を冷やさない飲み方について、次のアドバイスを加えます。

「冷え性だからこれらを飲んではいけない、というわけではありません。1日に何度も飲み過ぎる、氷をたくさん入れる、冷蔵庫でキンキンに冷やすなどして一気飲みするなどは、胃腸を冷やして体全体が冷えるもとになるので避けましょう。カフェインが入っていないお茶としては、麦茶を選ぶといいでしょう。冷えの原因には自律神経も関係するので、自分がリラックスするドリンクを適量とるのも重要です」

ドリンクを選ぶ際には、温めたからといって冷え対策になるとは言えない種類があることを知っておき、まずは原材料の特性を考えるようにしたいものです。

(岩田なつき/ユンブル)

取材協力・監修 西山和子氏。糖尿病専門・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)にて管理栄養士、糖尿病療養指導士。糖尿病、生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者さんを対象に、パーソナルな食事指導にあたる。『専門医が考えた 糖尿病に効く「腹やせ」レシピ』(福田正博 洋泉社)の監修担当。また、食生活に関する記事の執筆、監修多数。