木更津総合vs桐光学園
中川颯(桐光学園)
試合前半は桐光学園が上手い試合運びを見せていた。木更津総合の先発・早川 隆久(2年)に対し、毎回安打を記録。千葉県の各校の打者を太刀打ちさせなかった早川から安打を打つ桐光学園打線は実にレベルが高い。
4回表は二死から6番清水太一(2年)の二塁打、7番渡邉宏祐(1年)がストレートに詰まりながらも、左翼線二塁打を放ち、1点を先制する。 桐光学園の先発・大河原誠(2年)は左腕から球威ある直球、スライダー、カーブを低めに投げ分け、3回まで被安打1、無失点に抑える好投。しかし4回表、二者連続四死球で無死一、二塁のピンチを迎えたところで、あっさりと一塁を守っていたエースの中川 颯(2年)にチェンジ。中川はピンチを切り抜け、同点を許さない。
中川は下手投げから、コントロール重視の投球で打ち気をそらす投球。リズムも良く、強打の木更津総合打線をとらえさせなかった。木更津総合の五島卓道監督は、「相手投手はボールは速いですし、さらにテンポも早く、準備がなかなかできませんでしたので、早めに準備するように伝えたのですが...」と指示を送ったものの、なかなか打線が目覚めない。
6回裏には無死三塁のチャンスを作ったが、無得点。桐光学園が良い守備を見せていて、試合の流れは桐光学園に傾いているように見えた。 だがこのままではいけないとエースの早川がギアを入れる。早川は県大会中、ランナーがいない時から7割〜8割の力で投げて、ピンチの時に全快のストレートで打ち取る投球スタイルで手玉に取っていた。それができるのも、夏のトレーニングが影響している。夏が終わって、早川は、上半身のウエイトトレーニングを始めた。投手がアウトマッスルを鍛えるのは勇気がいるが、よりストレートをレベルアップするには筋力トレーニングで、パワーアップしなければならないと実感していた。
早川隆久(木更津総合)
ただアウトマッスルを鍛えるだけではなく、インナーマッスルを鍛えるなど、バランス良く体を鍛え上げてきた。そして栄養面でも気を遣い、練習前にはできるだけ炭水化物を摂ってエネルギーを蓄え、練習後にはたんぱく質、またビタミン摂取にも気を遣うなど、体を大きくすることにこだわってきた。
その結果、ストレートもコンスタントに140キロ前後までレベルアップ。1年の時からキレの良さが際立ったが、今は球威が出てきて、ボールが前に飛びにくいものになってきた。この日も最速140キロを計測するなど、力強さが目立ったが、力8分でも抑えられる投手というのは人並み以上のスピードボールを投げられる投手にできるもの。スピードが遅い投手が中途半端に力八分で投げても、合わせられるだけ。早川は7割〜8割でも130キロ中盤を計測し、さらに変化球の切れも良いので、しっかりと試合が作れるのだ。投手として余裕が出たといっていいだろう。
しかし桐光学園打線にはそれが通用しなかった。またこの日は変化球が思うように切れず、意図通りに投げられない。最近はストレートの調子が素晴らしかったということもあり、全快のストレートで勝負していった。そのストレートに桐光学園打線は前に飛ばすことも少なくなっていた。
そして7回裏、木更津総合は、一死二、三塁から9番井上 瑞樹(2年)の逆転適時打で2対1とすると、早川は走者を出しながらも、8回表には4番中川を狙い通りの高めのつり球で空振り三振を奪い、最後はなかなか投げなかったスライダーだったがリードする捕手・大澤 翔のサインを信じて、スライダーで投手ゴロに打ち取り、1失点完投勝利を挙げた。次の試合へ向けて早川は「次は甲子園を経験している花咲徳栄ですし、また相手の高橋 昂也投手は、本当に良い投手。でも同じ左投手なので負けない気持ちはある」と闘志を燃やしていた。
技術的にも、肉体的にも、精神的にも大きくなっている早川 隆久。関東屈指の左腕同士の対決は大きく盛り上がりそうだ。
(文=河嶋 宗一)
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