花咲徳栄vs樹徳

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花咲徳栄が後半勝負を仕掛け、強敵・樹徳を下す!

先発・高橋昂也(花咲徳栄)

 関東大会が開幕。県営大宮公園球場の内野席は多く埋まり、例年にない埋まり具合であった。開幕戦で地元埼玉の花咲徳栄が登場。対するは群馬1位の樹徳だ。樹徳は県大会で前橋商、健大高崎、桐生第一と強豪を破って勝ち上がってきている強敵だ。

 花咲徳栄の先発はストレートの最速は145キロを誇り、来年のドラフト候補として注目される高橋 昂也(2年)だ。高橋の注目度が高いということもあって、多くの観客が集まっているのだろう。だが高橋の立ち上がりだが、やや不安定。いきなり先頭打者に四球を許すと一死二塁となって、3番嶋田章(2年)の左前安打が飛び出し、一死一、三塁のピンチを招いたが、4番大関 優虎(2年)、5番新井勝貴(2年)もフォークで空振り三振でピンチを切り抜ける。

 この場面のポイントはランナー三塁がいる場面でも後逸のリスクがあるフォークを投げたこと。その理由として、「捕手の野本 真康は普段の投球練習からキャッチング、ストッピングも優れていたので、信頼して投げることができました」と野本を信頼して投げられるボールだった。やはりしっかりと捕球できる捕手の存在は投球の幅が広がることが分かる。 初回のピンチを切り抜けた高橋は、角度のある常時135キロ前後(最速138キロ)のストレート、変化球は縦横のスライダー、カーブ、フォークを使い分ける投球で試合を組み立てる。特にキレが際立っていたのは甲子園後、徹底的に磨きをかけてきたフォークだ。決め球としてフォークの重要性を実感。要所でも三振を奪えるのが強みだ。しかし145キロ左腕という触れ込みがあるだけに、ストレートが130キロ後半だと物足りなさを感じる方もいるかもしれない。

 甲子園後から期間少ない中で、秋季大会に入る。これでは肉体的な面を強化する時間帯はない。どちらかというと体力維持しながら、入っていく。それを考えると、勝てる投球を実現するためにフォークを習得した高橋のプロセスは間違っていないだろう。ストレートが進化するのは来春以降になってくるだろう。体力強化するオフシーズンで、肉体面の進化により、さらにストレートもパワーアップすれば、楽しみな大型左腕になっていくはずだ。

 また守りもしっかりと盛り立て、4回裏には一死二塁のピンチで、6番茂木丈太(2年)の左前へ飛ぶ打球を左翼・隈本達也ががっちりと捕球。二塁走者が飛び出し、併殺に打ち取るなど味方の好守備で無失点投球を続けていた。

先発・小寺怜弥(樹徳)

 一方で樹徳の先発・小寺怜弥(1年)はとても1年生とは思えないゲームメイク能力を持った投手。現在、激しさを増している群馬大会優勝を導くのが分かる好投手。

 左スリークォーターで常時130キロ前後の直球、スライダー、カーブをテンポよく投げ分け、狙い球を絞らせないピッチング。コントロールが実に安定していて、危なげない投球。コントロールが良いのはフォームがしっかりしていて、ノーワインドアップから右足をバランス良く上げていき、テイクバック時にしっかりと肘が上がり、打者寄りでリリースできる球持ちの良さ、流れるような体重移動と、しっかりと基礎ができている。 小寺は花咲徳栄打線を4回二死まで無安打と素晴らしいピッチングを見せていた。初安打を打ったのは3番岡崎 大輔(2年)。ストレートを打って、右翼線を破る二塁打。しかし岡崎も「小寺投手は素晴らしいコントロールをしていたと思います」と相手打者が絶賛するほど出来は良かった。

  5回まで0対0のままで迎えた6回表、一死二塁で迎えた場面で再び岡崎二打席がまわってきた。これまで岡崎は小寺に対し、外角球を狙い球に絞り、左中間に打つことにこだわっていたが、だがそれを捨ててインコースに標準を合わせた。1ボールからの2球目。「一番甘い球だった」と岡崎は語るように、インハイに浮いたストレートだった。岡崎はそのストレートを逃さずに振り抜き、打球は左中間を抜けていき、先制適時二塁打となる。さらに4番隈本の適時二塁打も飛び出し、2点目をもぎとる。

セーフティバントを決める岡崎大輔(花咲徳栄)

 これで試合の流れを掴んだ花咲徳栄は、8回表、無死二塁の場面で、打席が回ってきた岡崎は、ベンチからのサインを除くと「セーフティバント」。セーフティバントが得意だという岡崎は、三塁手の動きがやや後ろを守っていたのを見て、三塁付近をバントした。絶妙に三塁手の前へ転がり、岡崎は俊足を飛ばし、内野安打に。一死一、三塁のチャンスを作った。そのあと、二死一、三塁となって、一塁走者・楠本 晃希(2年)がスタートを切り、その隙を見て岡崎が本塁へ突入。俊足を飛ばして見事に生還。鮮やかな本盗で3点目をもぎとった。このプレーについて、「ダブルスチールはいつもから練習をしていた成果だと思います」と胸を張る岡崎。隙をついて奪い取った見事な1点だった。岡崎だが、以前からインパクトまで無駄のないスイング軌道から右、左に打ち分けるバットコントロールが光っていた選手だが、脚力の高さはもちろんだが、これほど相手の隙をつく目敏さがある選手だったのは驚きだった。あとは守備面でスピード、スローイングの強さが出てくれば、さらに評価される選手になるだろう。

 そして9回表にも1番千丸剛(1年)の適時打で4対0とした花咲徳栄。しかし9回裏、無死から5番新井が左前安打で出塁し、6番茂木は甘く入ったスライダーを捉え、2ラン本塁打。これで4対2の2点差としたが、反撃はここまで。最後の打者を空振り三振に打ち取り、花咲徳栄が準々決勝進出を決めた。

 完投勝利を挙げた高橋昂は、「久しぶりの9回でスタミナ切れしたところは反省点です。また立ち上がりも良くなかったですので、次の準々決勝で1日空くので、しっかりと修正していきたいと思います」と次の試合へ向けて意気込みを語った。次は木更津総合。初戦に続き、強敵となるだけに、しっかりと締め直していきたい。

 敗れた樹徳は、高橋昂から7本の安打を打つなど、打撃力は高かった。その中で目についたのはしっかりと振り抜くことができる選手が多いこと。そして守備も内外野陣が堅い。中盤以降、走者を出すことが多くなったが、バタバタすることなく、守備ができていた。全国でもハイレベルな花咲徳栄と対戦できた経験は来春に大きく生きることだろう。

(文=河嶋 宗一)

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