フライアウト「17」から見えるもの

 この試合、まずは松山商の27アウトと今治西の24アウトを比較してみよう。

ゴロアウト:松山商8(うち犠打2) 今治西10(うち犠打5・併殺2)フライアウト:松山商17 今治西9(うち犠飛1)三振:松山商2 今治西3

 突出しているのは松山商のアウト3分の2を占めるフライアウト「17」である。前日「自分を出し切る術だけを授けて、明日は思い切ってやらせたい」と重澤 和史監督は語っていたが、この結果は到底納得のいくものではないはず。ただ、高い視点で見ていると、その裏には現状における松山商のスイング軌道と身体の動かし方に対応した今治西の「うまさ」がよく見えた。

 夏の甲子園でもベンチ入りした先発の金本 遼(1年・176センチ67キロ・右投右打・今治市立北郷中出身)はこの試合でスローカーブを多用。目線と身体を下に沈めた上で高めのストレートを勝負球に使っていた。これにより松山商は強いライナー性飛球を放つに不可欠な下半身の粘りを欠いたまま、いわば身体が伸び上がった状態での強スイングを強いられることに。当然、投球はバットの下に入り、数多くのフライを生むことになったわけだ。相手のバント処理ミスから一気呵成に攻め立て、3得点につなげた2回裏の攻撃含め、ここは「流石・今治西」というべきであろう。

 ただ、これは1回戦のレポートでも記したように、相手に力を出させない術に長ける今治西・大野 康哉監督の戦術傾向を見れば松山商が十分予測すべきこと。彼らには多くの観客が肩を落として帰路に就いた理由をよく噛み砕きながら、冬に選択の引き出しを多くする練習に取り組んでほしいと、切に願いたい。

(文=寺下 友徳)

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