チェコ戦で途中交代した清宮幸太郎【写真:富樫重太】

写真拡大

チェコ戦は途中交代、清宮の野球人生は故障との闘いの連続

 まさかの光景だった。第27回U-18(18歳以下)ワールドカップに出場している高校日本代表の怪物ルーキー・清宮幸太郎が、8月31日のチェコ戦で故障により途中交代。公式戦では初めて試合途中に退く事態が起こった。

 清宮は、2打席凡退した後の3回の守備からベンチに。交代のアナウンスが告げられると客席がざわついた。試合後、少し足をひきずるようにして現れた清宮は、左膝に違和感があったことを明かした。

「試合前の練習でキャッチボールをしている時に変な感じがあった。でも、大丈夫、大丈夫です」

 努めて明るい表情で軽傷を強調したが、清宮の野球人生は故障との闘いの連続だった。その裏には、驚異的な運動能力を持つ怪物ならではの“ひずみ”が要因としてあったように思える。

 調布シニア時代の中1冬に腰を疲労骨折。あまりにも速いスイングスピードに体がついてこられなくなったことが原因といわれる。この故障によって1年以上を棒に振り、苦しい中学時代を過ごした。

16歳でプロ野球のスラッガー並みの肉体

 さらに、今夏の甲子園大会後も、「過去に2度故障していた古傷の右肩を西東京大会前に痛めていた」と一部で報じられた。

 8月31日に弟・福太郎も優勝したことで話題となったリトルリーグ世界大会に、中1夏に東京北砂リトルの一員として出場。投手で2勝、打者で3本塁打と投打で大活躍した。

 当時から、同年代と比べても飛び抜けて大きかった肉体を生かしている印象が大きかった。成長期で肩にかかる負担は軽くはなかったはずだ。

「怪物」と言われても、一般的にまだ体が完成していない16歳。幼少期からの図抜けた成長曲線でつくられた184センチ、97キロというプロ野球のスラッガー並みの肉体を支えるのは、並大抵のことではないだろう。

 そう考えると、今回の左膝の違和感も、過去から続く“ひずみ”と無関係でないのかもしれない。まして、7月18日の西東京大会初戦から1か月半で15試合をこなし、甲子園から連続で長期の遠征が続いていた。高校初めての夏。肉体的にも、精神的にも負担はあった。

「しっかりケアしたい」と誓う清宮、体作りも1つの課題に

「松井選手や清原選手も現役時代に膝をけがされていた。自分にとっては初めての箇所なので、しっかりとケアをしたい」

 ファンを心配させてしまったが、誰よりも清宮自身が体のケアに注意を払っていく考えを明かしたことが、せめてもの救いだった。今後は技術だけでなく、体作りも一つの課題となりそうだ。

 今大会は唯一の1年生ながら日の丸の4番に座り、今後の高校球界を引っ張っていく逸材。1日のメキシコ戦以降の出場は回復具合を見ながらとなりそうだが、大会後は早実に戻り、12日から来春の選抜出場をかけた秋季東京都大会が始まる。

 今はただ、軽傷であることを願うしかない。