ドラフト1位左腕候補・小笠原 慎之介がさらにステップアップするには?

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 ドラフト上位候補に挙がる小笠原 慎之介投手の投球内容を分析!ドラフト上位候補に挙がる理由、過去に活躍しているドラフト1位左腕と比較しながら、小笠原の長所・課題を見出していく。

小笠原 慎之介が上位候補に挙がる理由

小笠原 慎之介(東海大相模)

 2015年のドラフト戦線で注目の東海大相模の左腕エース・小笠原 慎之介。今ではドラフト1位候補にも挙げられるほどの投手となった。では、「何故、彼がここまで注目される」投手となったのか。振り返ってみると3つのストロングポイントがみえてきた。

・本気になれば左腕から常時140キロ中盤の速球を投げ込むポテンシャルの高さに加え、ストレートをしっかりとコーナーへ投げ分ける制球力がある・ストレートを中心にある程度まとめられる投球術がある・182センチ83キロとプロレベルの体格をほこる

 つまり高校生としては十分なレベルに達しているのだ。小笠原の最大の長所は大型左腕だが、しっかりとまとまっていることだろう。彼が大崩れした試合というのは見たことがない。球速のある高校生左腕というのは、どちらかというと制球に乱れがあり、大崩れする傾向にあるが、小笠原にはそれがないのだ。

 ここで2005年から2014年までドラフト1位となった高校生左腕を挙げていきながら、比較をしていきたい。2014年までにドラフト1位になった高校生左腕は以下の通り。

■2005年辻内 崇伸(大阪桐蔭-巨人)片山 博視(報徳学園-東北楽天)村中 恭兵(東海大甲府-東京ヤクルト)柳田 将利(青森山田-千葉ロッテ)

■2006年延江 大輔(瀬戸内-オリックス)吉川 光夫(広陵-北海道日本ハム)

■2007年田中 健二朗(常葉菊川-横浜・横浜DeNA)

■2008年赤川 克紀(宮崎商-東京ヤクルト)中崎 雄太(日南学園-埼玉西武)

■2009年岡田 俊哉(智辯和歌山-中日)菊池 雄星(花巻東-埼玉西武)

■2011年松本 竜也(英明-巨人)

■2012年森 雄大(東福岡-東北楽天)濱田 達郎(愛工大名電-中日)

■2013年松井 裕樹(桐光学園-東北楽天)

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小笠原 慎之介(東海大相模)

 見てもらえばわかるが、2010年、2014年を除くとほぼ毎年高校生左腕はドラフト1位指名されている。むしろこんなに指名されたのかと驚く方も多いだろう。将来性が高い高卒左腕というのは、必然とそれだけで評価が高まっていくものなのだ。小笠原の能力は指名された過去の高卒左腕と比較しても、遜色がない。それを考えると、やはりドラフト1位候補として名前が挙がるのは、不思議ではない。

 一方で、指名された投手が全員活躍しているというかというとそうではなく、最速156キロ左腕で評判だった辻内 崇伸は一軍登板もなく引退しており、速球で勝負する柳田 将利も、故障が続き一軍登板がなく引退。むしろ制球力や、ボールのキレで勝負する投手が活躍していることが多いことに気付く。中継ぎで活躍する田中 健二朗、岡田 俊哉、先発投手として2012年に規定投球回に達した赤川 克紀、野手に転向するまで中継ぎとして活躍した片山 博視は完成度の高さを評価されてきた投手だ。

 ただ速球派で入団したもののプロのレベルにアジャストして活躍している投手もいる。その代表格が吉川 光夫だろう。課題である制球難を、メンタル改革とフォーム修正を経て、大変身。2012年のパ・リーグMVPとなった。

 また試行錯誤を繰り返しながらも先発ローテーションで活躍し、日本球界屈指の剛球左腕へ成長を遂げた菊池 雄星。荒れ球が多かったが、左腕として稀な常時140キロ後半な速球と絶対的な変化球の精度を誇り、クローザーとして太刀打ちさせない投球を見せる松井 裕樹。彼らの成長を取り上げてみると見えてきたことがある。

5つの項目で、小笠原 慎之介の長所と短所を分析

 プロで活躍する左腕投手で共通して必要なのは

・一定以上の制球力がある・一定以上の速球がある・絶対的なウイニングショットがある・しっかりとまとめる投球術がある・常に安定したパフォーマンスを発揮できる(故障しないこと)

 の5つだろう。この5つを当てはめて小笠原の現状を調べていきたい。

 まず左腕に必要な制球力。小笠原は抜群の制球力はなく、今年の春季大会準々決勝の慶應義塾戦で、6四死球と確かに多い。が、試合を見ていると高めへすっぽ抜けたり、完全なボール球を投げているわけではなく、強打の慶應義塾打線相手に慎重な投球を心掛ける故、多くなったパターンであった。速球は低めに決まっており、140キロを超えるとなれば、オーバーフェンスは厳しい。

 小笠原は何でもかんでも力任せに速球を投げるわけではなく、速球をしっかりと丁寧に投げ分けている姿勢が良い。東海大相模は全国制覇を目指す強豪ということもあり、自己満足な投球をした時点で負けという自覚が、今までの投球からも感じられる。

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[page_break:この夏はストレート以外に武器となる変化球を見出すことができるか?]

小笠原 慎之介(東海大相模)

 球速も高校生左腕としては常に140キロを超えており、申し分ない。球速面はクリアしている。そして絶対的なウイニングショット。小笠原にとって一番の課題とも言っていい。小笠原は、決め球と呼べる変化球がない。そのことを痛感したのは関東大会準決勝の浦和学院戦だろう。

 浦和学院の先発・江口 奨理は決め球のチェンジアップを駆使して、12奪三振完封。一方で小笠原は、ストレートが当てられ、終盤に捉えられ4失点。思うような投球ができないことに歯痒さを感じたはずだ。ストレートで押し切れない時に、どうすれば最少失点に切り抜けられるかがまだ確立できていない。これは対応力が高い浦和学院と対戦して見えてきた課題で、全国制覇を目指す小笠原にとっては避けては通れない課題である。その課題を乗り越えることはできるか?

 投球術については低めに投げ分けたり、カーブを交えたりなど、意思を持って投げているのは伝わる。1年生の時から見てきているが、四球連発で崩れる姿というのは見たことがない。また、速球を勢いよく投げていた下級生の時と比べると進歩がみられる。夏へ向けてさらに進化が期待できるだろう。

 そして小笠原で一番評価できるのは安定したパフォーマンスを発揮できること。1年春から登板してきた小笠原は、ここまで大きな故障をすることなく投げることができている。見るたびに140キロ台を計測しており、入学時から少しずつパワーアップを遂げていることを考えると、しっかりと自己管理をしながらトレーニングを積んできたことが伺える。

この夏はストレート以外に武器となる変化球を見出すことができるか?

 そうなるとやはり課題はウイニングショットの習得となるだろう。現状はストレート中心のピッチング。甲子園を目指すとなると、ストレート以外に武器となる変化球を覚え、投球の幅を広げていきたいところだ。

 今年の神奈川だが、打線に力のある桐光学園、ラストサマーを迎える渡辺 元智監督の下、気合いが入っている横浜とハイレベルな打撃型チームが多い。桐光学園は直球系に強い打者が多く、甘く入れば確実にスタンドインさせる怖さを秘めており、横浜も4番公家 響を中心にしつこい打者が揃っている。ここまで2試合連続コールドと順調に勝ち上がりを見せており、小笠原攻略へ向けて徹底的に研究をすることだろう。また横浜は夏になると最後までしぶとい攻撃を見せる。そのしぶとさに耐える投球ができるか。

 今年の夏は小笠原の成長を確かめるには最後の機会。春よりも進化した小笠原を見れることに期待したい。

 (文・河嶋 宗一)

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