進化を続けるファミレス。たくさんあるなかで良い店、悪い店を見分けるためにはどこに注目すると良いの? 今回は『食品安全教育研究所』代表の河岸宏和さんにお話を聞いた。

河岸宏和さん ●「食品安全教育研究所」代表。食品工場の品質管理を経験したプロ。『「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます』(東洋経済新報社)ほか著書多数

たとえば『イタリア産生ハム使用』『北海道産帆立使用』なんていう言葉がよくメニューに書いてあると、食材にこだわっている、きちんとした店だなと思っちゃうけど……

「ちょっと待って。その産地表示、すべてのメニューに採用されていますか? サラダの生ハムはイタリア産かもしれないけれど、何も書いていないチキンカツの鶏肉は、たいていブラジル産。豚肉なら台湾産かアメリカ産だったりします。そこまできちんと書いてある店ならむしろ信用できますが、自慢したい食材の産地だけ書いてあるメニューは、儲けに走ってしまった”ごまかし”が隠れているかもしれません」(河岸さん)

2013年、一流ホテルを含め多くの店で問題になった食品偽装。なかでも注目を集めたのが、成型肉やインジェクション肉を使った料理を、『ステーキ』などと表示していた問題だ。

「成型肉とは、骨の周りから削り取った端肉や内臓肉をつなぎ合わせたもの。肉の断面を見れば、繊維の向きがつぎはぎなのでわかります。インジェクション肉は、肉に針をたくさん刺して、脂肪分などを注入して高級霜降り肉風に加工したものです。問題発覚以降、大手はメニューに表示するようになっていますが、その文字が小さく、誠実でないところも多いですね」

と、河岸さん。ちなみに鶏肉は原価が安く、加工でのごまかしは少ないので、比較的安心だそう。

外食のときは、健康に気を遣ってサラダをオーダー。サラダは生野菜を使っているわけだから、新鮮なものを調理したてで出すのは当たり前でしょ、河岸さん?

「残念ながら、多くの店がその当たり前ができていません。利益追求のため、工場でカットした野菜を仕入れ、店では皿にのせるだけ……というところがほとんどです。サラダのレタスは本来、食べる直前に手でちぎったものがおいしいのですが、皿にのせられたレタスが四角ければ、工場で機械がカットしたものでしょう。そして、切り口が茶色くなっていたら、切ったのは2〜3日前ということ。レタスの形が不ぞろいで切り口が白ければ、まずは第一関門クリアですね」

なるほど。ほかにも見分けるポイントはあるのだろうか。

フライの甘みと衣の固さがポイント

「揚げ物にも、その店の姿勢が表れます。まず、客席まで胃が重くなるような油臭さが漂っている場合、使っている油が古く酸化しているということ。食べたときパン粉が細かく妙に衣が固いようなら、工場で衣をつけて冷凍したものを仕入れています。また、コロッケが甘い場合も、冷凍の可能性が大。冷凍しても品質が変わりにくく、日持ちもよくなるよう砂糖を多めに入れているためです」

と、河岸さんはきっぱり。ならば、おいしい揚げ物の見分け方は……?

「柔らかくサクサクした衣は店の厨房で生パン粉をつけて揚げているということ。チェーン店では例えば『とんかつ和幸』もそうした店のひとつです」

チェーン全体のおいしさへのこだわりを見極めたいなら、食器の材質にも注意してみよう。持ち運びがラクで、落としても割れない樹脂製は論外。薄手の強化磁器はまずまず。

「私が感心したのは、和定食チェーン『大戸屋』の食器です。メニューによってはどっしりと重い陶器を使っています。持ち運びや取り扱いが大変でしょうが、料理のおいしさを味わってもらうために使っているのでしょう」

と河岸さん。同じチェーンでも店舗ごとの力量が表れるのが皿の温度管理。

「サラダなど冷たい料理は冷たいお皿で、温野菜やスープなどは温かい器で出すなら、そのお店のスタッフの切り盛りが優秀ということです」