浦和学院vs川越東
適時打を放った津田（浦和学院）
関東大会決勝は1991年以来の埼玉勢同士の対決となった。浦和学院と川越東。すでに二度と対戦している。まず秋は決勝で8対5で、そして春では11対4で浦和学院（試合レポート）が勝利している。ふたたび浦和学院が制するのか、それとも川越東がリベンジを果たすのか。
その両校の対決はもちろんだが、個人で注目したい選手が一人いた。それが浦和学院の主将で遊撃手の津田 翔希（3年）である。1年夏からベンチ入りを果たし、その後もショートストップとして守備、打撃面で引っ張ってきた。だが関東大会初戦では無安打。東海大相模戦（試合レポート）でも、序盤まで凡打に終わり、打ち取られる姿を多く見てきた。それは守備面でも影響を及ぼし、関東大会では失策することもあり、攻守ともに不安定な姿が見られた。
だが8回表、東海大相模の149キロ左腕・小笠原 慎之介から本塁打を打って勝利に貢献。これまで不調に陥っていた多くの選手が一つの本塁打から変わった例を多くあるだけに、昨日の本塁打から変わっているのか。第1打席から注目してみた。
1回裏、1番諏訪 賢吉(3年）が敵失で出塁し二盗成功。さらに犠打で一死三塁のチャンスで打席を迎えた。津田は見事に直球を捉え、左前適時打で先制点を挙げる。それまでの打席と違い、迷いがなく、的確にミートに成功した。
さらに5番�盒� 司（3年）の中前適時打で2点目を挙げ、幸先よく2点を先制する。2回表、川越東は6番川田 遼（3年）が右越えソロ本塁打を放ち1点返されるが、その後、さらに5回裏、敵失で出塁すると二死二塁から2番臺 浩卓（3年）がライト線を破る適時三塁打。そして津田が初球を捉え左中間を破る適時二塁打で4対1として、試合を大きく優位づける結果となった。
これで第2打席の中前安打を含め、3打数3安打となった。この日の津田は構えからゆったりとしており、ボールの待ち方に性急さがなくなった。 今までだと我慢しきれずに振りに行って、芯を外した打球が多かったが、この日はゆったりとボールを待ちかまえ、ボールも良く見れて、素直にバットが出て、的確にボールを捉えることができているのだ。本来ならば最短距離でバットが出てボールを捉えることができる選手。
もともと俊敏な動き、遠い位置から正確なスローイングができる技術、肩の強さ、フットワークの良さと確かな守備力を持った選手。ここに無心の境地でボールを持ち、この日のように快打を継続できれば、さらに高いステージで出来る可能性を持った選手であろう。関東大会決勝で復調の兆しを見られたのは収穫であった。
好投を見せた小倉（浦和学院）
投げては小倉 匡祐（3年）が好投。疲労がたまっている中で、調子は良くないようだった。阪神の能見篤史投手のようにインステップ気味で、歩幅を広く取ったフォームから130キロ前半の速球を両サイドだけではなく、高めに投げたり、スライダー、カーブを投げて、走者を出しても要所を抑える投球内容。9回に5番札葉 弘樹（3年）の犠飛で1点を失ったが、2失点完投勝利で、5度目の関東制覇を果たした。
打倒・浦和学院を誓う川越東に対して、全く寄せ付けない戦いで関東制覇を決めた浦和学院。この日、適時打を放った�盒� 司、準決勝で本塁打を放った荒木 裕也、準決勝、決勝続けて適時打を放った臺を含め、レギュラー各選手が好調を維持し、投手陣では絶対的なエース・江口 奨理に続く存在として、小倉、さらに2年生の速球派右腕・榊原 翼（2年）が台頭。順調にステップアップをしている。今後は7月10日に開幕する埼玉大会へ向けて、さらに厳しい競争を行っていくだろう。
敗れた川越東も、終盤に1点を返し、粘りを見せた。控え選手の登板が中心だったとはいえ、大敗した県大会と比べれば、格段に進歩を遂げている。川越東も夏へ向けて多くのベンチ入り選手の経験を積ませることができた。練習試合での経験と公式戦の経験はどちらが良いといえば、当然、公式戦である。
こういう因縁の試合は続くものである。再び夏の対戦が決まったとき、試合終了まで手に汗握る試合展開が予想されるか、楽しみにしていきたい。
（文＝河嶋 宗一）
