10日、小金井市の自宅で公共トイレの調査結果を手に「障害者と一般住民が一緒になる輪が、日本中に広がってほしいですね」と語る秋山さん。(撮影:佐藤学)

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車いすの障害者にとって外出する際に、利用できる公共トイレの有無と場所を事前に確認することは欠かせない。なぜなら、空腹には耐えられてもトイレは我慢が効かないからだ。そんな不自由さを解決したいと、自らが住む市内の公共トイレ約60カ所を車いすでまわり、規格の適合性や利便性を調べ上げた障害者がいる。

 東京都のほぼ真ん中に位置する小金井市に住む秋山早苗さんは約30年間、多発性硬化症という脳と脊髄の病気と闘う障害者だ。秋山さんは2001年、定期検査で入院中、障害者にとって不自由な公共トイレをなくそうと、自ら実態調査を行うことを決心。巻き尺、鉛筆、メモ用紙を手に、市内の公園を始め、市役所、公民館、駅、学校、スーパーなどのトイレ調査を開始した。調査に要した時間は、2001年からの2年間。

 電動車いすに乗った秋山さんは、原則として、自宅から独りで調査現場へ向かったという。車いすのバッテリーが約3時間と限られているため、市外のトイレなど遠方の調査には片道だけタクシーを利用した。調査現場に到着して最初に行うのは、トイレの床面積の計測だ。障害者や高齢者用のトイレの基準、縦横共に2メートルあるかを調べる。次に、障害者にとって必要な設備として、L字型と移動型の2種類の手すりの有無を確認する。さらに、管理者やトイレの外にいる人に緊急を知らせる非常ボタンが設置されているかも重要なポイントだ。

 調査結果を小金井商工会主催の「小金井夢プラン」に応募・入選した秋山さんは、そこで、様々な分野で専門知識を持つ「シニアSOHO」というグループと出会った。同グループは秋山さんの調査結果をデータ化し、「だれでもトイレ」という名称でトイレの場所をマップや一覧表の形でホームページ上で公開している。また、小金井市は現在、公共トイレの新設や改修の予算化にあたって、秋山さんと障害者の仲間の意見を伺うという。【了】

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