難しいコースに「とっても、頭を使う」 (Photo JJ.Tanabe)
 米女子ツアー第11戦、サイベースクラシックの初日は、夕方になって雷雨に見舞われ、一時中断の末、濃霧と日没によるサスペンデッドとなった。18ホールを回り終えた宮里藍は、苦戦しながらも最後に明るい光を得て3オーバー74、暫定48位タイ。諸見里しのぶは6オーバー77で102位タイ。首位タイにはナタリー・ガルビス、ベス・バウアー、韓煕圓の3人が並んだ。

 会場のワイカギルは全長6223Yと距離が短いもののフェアウエイもグリーンも傾斜に富み、ラフも深くて難しい。ホールの両サイドに立つ木々の枝葉が張り出しているため、フェアウエイは一層狭くなる。砲台グリーンが多く、その手前の傾斜は芝が刈り込まれている。グリーンを狙ったショットは、少しでも距離が不足すれば、容赦なく手前へ手前へと転がし戻される。そしてグリーンは、小さめではあるが、微妙なアンジュレーションがいっぱい。そんな難コースを水曜のプロアマで初めて回った宮里藍は、「すごく難しい」と警戒心を示した。「ティショットがキーになる」という言葉は、フェアウエイキープが絶対条件であることを示していた。ラフに入れたら出るかどうかもわからない。たとえボールが浮き気味でライが良かったとしても、ラフからのショットは距離感も狂いがち。方向性もどこまで出せるかは疑問だ。

 そんなふうに前日から宮里が警戒していたことが、すべて悪いほうへ出てしまったのが初日のラウンドだった。カギを握るはずのティショットはラフへラフへと飛びこみ、ラフからのショットは「PWで打っても手を離しちゃう」ほどの粘っこさゆえ、出すのが精一杯だったり、距離感が狂ったり。だからピンに付かない。8メートル、10メートルといった長い距離のファーストパットは、たとえ上りのラインだったとしても、「上に付いたら50センチでも気が抜けない」という速さゆえ、なかなか突っ込めない。バーディが狙えない。

 「パー5で(バーディが)取れなかったわりには我慢した」という耐えるゴルフが続いたが、ターニングポイントは17ホール目の8番でやっと到来した。フェアウエイからのセカンドショットがピン3メートルへ。これを沈めてバーディ。「お願いだから入ってくれ」と言わんばかりの体を折り曲げたポーズから願いが伝わったかのように、ボールは最後の日と転がりでカップに沈んだ。続く最終ホールもフェアウエイからの第2打が5メートルに付いた。バーディパットはカップ手前の淵で止まってしまったが、最後の最後に流れが良くなったのは、明日への朗報だ。

 「読みも尻上がりに良くなってきている」と宮里。曲がっていたティショットも「そんなに大きな問題はない」。ラフから出せないのは「パワー?うーん、この芝はみんなそう」。前向きな分析は、確かにその通りだと思う。深く粘りのあるラフは、タイガー級のパワーヒッターにとっても大敵だ。ラフに対抗できる筋力を望むより、ラフに入れないことこそが大切。ティショットの立て直しがゲーム全体の立て直しにつながるであろうことは、宮里自身が一番よくわかっているはずだ。

 諸見里しのぶが崩れた原因。これまた本人が一番よく認識していた。「朝から嫌なことがあってイライラしていた。私的なことを持ち込んじゃいけないのに、それで崩れたらアマチュアと変わらない」。私的なことが何なのか。あくまで私的なことゆえ、あえて追求はしなかったが、よほどショックなことだったのだろう。唇をギュッと結んで取材陣に気丈に答えた諸見里は、記者の群れから離れた途端、こらえ切れず泣き出した。だが、「メンタル面のコントロールができなきゃ。まだまだプロじゃない」とは自身の言葉だ。今日は精神的な原因で崩れたが、明日、前進できればいい。立ち切れるかどうか。忘れられるかどうか。巻き返せるかどうか。そこに、プロらしさが表れる。落ちても落ちても這い上がればいい。まだ19歳なのだから、そうやって少しずつ強くなっていってくれたらいいと思う。

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