欧州原子核研究機構(CERN)が持つ世界最大の加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」は、ヒッグス粒子の発見の後、オーバーホールを兼ねつつより性能を高めるための改良工事が行われてきました。そして、2年の時を経て、2015年4月5日ついにLHCが運転を再開し、ビッグバン直後に起きたことや暗黒物質の謎の解明にリスタートを切りました。

CERN | Accelerating science

http://home.web.cern.ch/

Large Hadron Collider restarts after two-year rebuild - BBC News

http://www.bbc.com/news/science-environment-32160755

LHCはスイス・ジュネーブ郊外の地下約100mに設置された円形の大型加速器で、直径が約8.6km、1周約27kmの巨大な実験施設です。



LHCは円形のトンネル内で粒子を反対方向に光の速度で加速させて衝突させることで新しい粒子を誕生させるという壮大な実験施設で、2013年のノーベル物理学賞を受賞したピーター・ヒッグス博士のヒッグス粒子を観測したことでも有名です。今回の改良工事によって、従来8TeV(8兆エレクトロンボルト)だった出力は13TeV(13兆エレクトロンボルト)へアップしたとのこと。



なお、CERNには「島」と呼ばれる4つのコントロールセンターがあります。4つ島はそれぞれ「陽子シンクロトロン制御部門」「スーパー陽子シンクロトロン制御部門」「技術インフラをサポートするサポート部門」、そして「LHCの制御部門」という名称です。



ちなみにLHCの実験では、1秒間に数億回の衝突が生じセンサーによって検出される生データが1秒あたり1PB(100万GB)になるため、LHCにはとてつもなく巨大なデータセンターが併設されています。



2年の沈黙を経て、ついに復活したLHCの再稼働のときのLHC制御部門の様子は以下のムービーで確認できます。

#RestartLHC: Beam 2, the first to circulate - YouTube

CERN所長のロルフ・ホイヤー氏は「地下に太陽ができる」とLHCの再稼働を表現しています。



科学者たちも緊張している様子が見て取れます。



いよいよ再稼働の瞬間。



そして、再稼働は無事、成功。拍手がわき起こっています。



電子ビーム部門のリーダーのポール・コリアー博士は「実験までには機器の検証などやることがある」と述べています。



再稼働に成功したLHCは、2015年6月から約3年間にわたる実験をスタートさせる予定。新生LHCによってヒッグス粒子のさらなる特徴の観測、余剰次元反物質の研究、ビッグバン発生時の状態や暗黒物質の解明など、さまざまな知見が得られるのではないかと期待されています。