いったいどちらが強いのだろう。
 ここまで8節を終えたJ2リーグで、湘南ベルマーレが首位を独走している。開幕から8連勝は「勢いがある」という次元を越え、25得点3失点という数字は攻守にスキのない戦いぶりを浮き彫りにする。

 とにかく走る。マイボールとなった瞬間に、数多くの選手がボールに関わろうとする。攻撃の最終地点となるペナルティエリア内には、少なくとも4人が入り込む。5人以上が侵入することも珍しくない。3バックの一角を担う遠藤航や三竿雄斗も、ためらいを感じさせることなく最前線へ飛び出す。

 守から攻はもちろん、攻から守への切り替えがスピーディだ。ゲームの終盤になっても運動量は衰えず、勝利が決定的となってもなおゴールへ向かっていく。15分刻みに得点を集計する時間帯ゴール数で、76分から試合終了までに最多の8ゴールを記録しているのは偶然でない。

 土曜日はJ1、日曜日はJ2というルーティーンで、湘南の試合をスタジアムとテレビで観戦してきた。彼らのサッカーが面白いかどうかは人それぞれだとしても、J1に負けないスピード感がある。ピッチから目が離せない意味では、間違いなくJリーグのトップクラスだ。

 こうなると、冒頭の疑問が頭をもたげてくる。J1の中位から下位チームが相手なら、湘南は必ずや好勝負を演じるのではないかと。

 2014年現在でJ1とJ2が真剣勝負を演じるのは、入れ替え戦と天皇杯しかない。天皇杯はJ1、J2ともにシビアな状況となる秋以降に行なわれ、クラブによって熱量がまちまちだ。J1がJ2に苦杯をなめたところで、一過性のニュースで終わってしまう。

 昨シーズンの天皇杯で浦和レッズがモンテディオ山形に、J1だったジュビロ磐田がコンサドーレ札幌に屈したことを、どれだけのサッカーファンが覚えているだろうか。クラブの置かれた立場が切迫するほどに、敗戦は大きな痛みを伴わない。J1のクラブにとっての天皇杯(正確には大会序盤)は、そうした位置づけとなっている。

 現在はJ1だけで争われるナビスコカップに、J2を再び迎え入れるのはどうだろう。

 J2を独走する湘南が、J1の中位や下位と対峙する。湘南からすれば、自分たちの力をはかる絶好機だ。勝利をつかめば実力を誇示することとなり、チームは自信を深め、集客アップの材料がひとつ増える。

 J1のクラブには、プライドと意地がある。J2のクラブに負けるようなことがあれば、ネガティブなニュースが発信されてしまう。少なくとも表面的な部分において、J2との真剣勝負にメリットは見出しにくい。

 ただし、悪いことばかりでもない。
 負けられない戦いに挑むのは、ストレス耐性を磨くことにつながる。J1対J2のナビスコカップは、アジアにおける国際試合に似ている。ホーム、アウェイを問わずに、勝利が義務づけられるからだ。

 Jリーガーが等しく経験できる「負けられない戦い」は、1年に1度ないし2度の天皇杯しかない。敗戦が批判につながるゲームを経験することは、個々のストレス耐性を高め、ひいては日本サッカーの国際競争力の向上にもつながる。J1の選手を精神的にも鍛える機会となれば、ナビスコカップの意義がはっきりと輪郭を帯びるだろう。

 それにしても、湘南は走る。攻めて、守って、妥協をしない。ひたむきな情熱を感じさせる。ゴールデンウィークのサッカー観戦を予定している方には、彼らのホームスタジアム平塚を訪れることをお薦めしたい。