これが法律上の「暴力団」だ

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■「名義貸し」などのリスクに気をつけよ

東京都、沖縄県を最後に全国の自治体で暴力団排除条例(暴排条例)が施行され、1年以上が経過した。

その間、一部地域で暴力団側の激しい反発が起きている。福岡県では暴力団排除の標章を貼った風俗店で不審火が頻発したり、スナックの女性経営者が切りつけられたりする事件が、繰り返し発生した。

福岡県では暴力団同士の抗争も起きている。暴排条例の施行後、暴力団員による刑事事件の検挙件数は減少しているが、一部が凶暴化しているのだ。こうした情勢を懸念した大手企業がその地域への工場進出を見合わせるといった動きも出ている。

そのため、関係自治体が国に強く働きかけ、12年7月、暴力団対策法の改正が実現した(12年10月末に一部施行)。抗争中の暴力団や、暴排条例等の暴力団対策により生活の手段を失った暴力団員による暴力事件を防ぐことが主な目的だ。警察による危害の予防的な介入が進むため、事態の沈静化が期待されている。

そもそも暴排条例の目的は、市民や事業者がスクラムを組んで社会全体で暴力団を孤立化させ、その資金源を断ち「安全・安心な社会」を築いていくことにある。そのため、暴排条例は、暴力団に協力したり、利用する等の密接な関係を持っている個人(「密接交際者」)を、「共生者」などの暴力団関係者と認定し、取引から排除する仕組みがあることだ。認定を受けると銀行口座は閉鎖、融資は打ち切られ、部屋や駐車場を借りることもできなくなってしまう。

条例の禁止対象行為は広範にわたる。相手が暴力団員であることを知りながら自分の名義を貸せば条例違反となるし、暴力団関係者と知って物品を購入したり、サービスを提供した場合、一般的な価格、通常のサービスであっても条例違反となる。

したがって、家族の友人などあなたの周辺に「暴力団関係者かもしれない」と思われる人物がいたら、関係を持たないようにするべきだ。頻繁に飲食を共にしたり、金銭を貸したりする関係に至っていれば、「密接交際者」と認定される可能性が高い。相手が古い友人であるとか、近しい関係にある場合は、暴力団をやめるように説得することも必要だろう。

もっとも、暴走族など指定暴力団とはされていない反社会的な団体の構成員との交際関係については、今のところ条例の対象とはなっていない。また、暴排条例の利益供与禁止違反の実際の事例でも、勧告が出されるのは、悪質な事例等を対象としており、警告や注意にとどまる事例が多い。

だが、条例の勧告・公表の対象とはならなくとも、そうした関係がオープンになり、週刊誌等のマスメディアに過去の暴力団構成員との関係を暴露されれば、社会的非難を受け、公職にあるものであれば辞任に追い込まれるような事態を招くことになる。こうしたレピュテーション・リスク(評判の低下)は避けられないと肝に銘じておくべきだ。一般の人でも、暴力団との交際が強く推定される場合は、条例上は密接交際者と認定されるまでの関係を有していなくとも、部屋を借りられないとか、融資が受けられないといった不利益をこうむるおそれは十分にある。

また、表立っては契約の主体になれない暴力団員らが、友人、知人の名義を借りてクレジットカードをつくるといった「名義貸し」の事例も確認されている。こうした犯罪に加担させられる危険も大きい。

とはいえ、関係遮断にも様々なリスクがともなう場合がある。各都道府県の暴力追放運動推進センター(暴追センター)や警察に出向き、対処法を相談するのがいいだろう。

(弁護士 園部洋士 構成=久保田正志)