逆転負けの余韻が残っているうちに、一度取り上げてみたかったこの件を考えてみたい。勇気の要る更新である(苦笑)。

勝負事、とりわけチームで勝ち負けをつけるスポーツは、監督・コーチの指揮官たちが下す采配(サイン)を、出場している選手がどれだけ忠実に実行できるかどうかで勝敗の帰すうが決まることが少なくない。

昨日の試合、ホークスは4回まで毎回先頭打者が出塁した。3回まではすべて2塁打。無死2塁というシチュエーションである。こんなに続けて塁上をにぎわせたのは、今季初だろう。

序盤だから、無死2塁は押せ押せでもいい。進塁打くらい打てるだろう。初回は送って失敗したから、違う攻め方で点を取っていくべきだ。2回は好調・長谷川だから引っ張る打撃ができる。ヒットならランナーは足の速い松田だからホームインできる。バントはいかにも消極的ではないか。

4回は1点取って無死1、2塁。本多に送らせても打てない今宮。あそこは本多に打たせたほうが良かった。ハマればビッグイニングになるではないか。バントに切歯扼腕した人の意見は、おおむねこんなところではないだろうか。

バントがプロの打者にとって難しい技術かといえば、そうではないだろう。苦手な人もいるだろうが、それはプロに入るくらいの人たちだから、高校までは投手で4番で主将。そんなタレントが、バントひとつできないはずがない。

犠打の経験がなくても、10回やって8回くらいはできないと、と思う。たとえ相手投手が一流であってもだ。HRを打つよりはバントのほうが簡単ではないか。

そうすると、問題はサインを出す指揮官の采配が賛否の焦点になる。まず先制点の機会を作ることが優先される。野球は点取りゲームだから、お膳立てをしてタイムリーや犠打など点が入るような場面を数多く作るほかない。得点圏の機会を何度も作って、それで得点できないとしても、形を作ることが大事なのである。それを繰り返していけば、いつかは点が入る。

ただ1死3塁になって、打席に立つ選手の力量もバントを選択するかどうか、判断の分かれ目になる。実はここが一番大きな問題なのではないだろうか。

1つアウトを献上することが消極的だからではなくて、3塁に進めたらどのくらいの確率で得点できるのか? ここが思案のしどころだと思う。

昨日の試合で言えば、初回、3回の今宮バントは次打者は内川だから順当なサイン。いちばん意見が分かれるのは、2回だろう。

バッテリーも進塁打を嫌がる場面で左の長谷川に内角は投げないから、外角一辺倒。その外角の探り気味のボールに初球から手を出したのは、ボールを見極める長谷川にしてはお粗末だった。

もう少しじっくり谷元の投球を見て、バントかヒッティングかを見極めたら良かった。バント苦手な選手にサインを出した采配ミスという意見があると思う。好調な長谷川だから、ここは1球ずつサインを変えて臨んだら良かったかもしれない。よく、バントは初球で決めたら流れが良いというが、失敗したら元も子もない。

同じ1死3塁で1回に取れなかったからといって、今度は違う攻めをする必要はないと思う。攻撃のバリエーションが少ないのは否定できないが、手堅く1点ずつというのは、統一球以降、まずまず妥当な戦略ではないだろうか。

秋山監督の采配は、極めてオーソドクスなほうだ。ギャンブルをしない。リスクをとらない采配である。取れるときに取っておく。そのためのバントと考えていると思う。

見る側は、連打を期待する。昨日の谷元だったら、できたかもしれない。しかし、連打はそうそう生まれるものではない。

敢えて言えば、これだけバントを多用する監督、とのレッテルが貼られているならば、無死1塁のケースでは、駄目モトでバスターエンドランを時々かけてみるべきではないかと思う。中軸が後ろに控えている時の無死2塁は7割がたバントでいい。

先制点をあげることと、先発が5回まで最小失点で抑えること。勝利の鉄則である。中押し、駄目押しで、勝敗は決する。5連敗のあとに連勝し、3タテのかかった昨日のゲーム。バント作戦そのものよりも、そのあとの打撃のほうが頭が痛い、と思う。

まだ始まったばかり。4勝5敗か3勝6敗かは、大したことではない。先制点を取る場面を作ること、これが最も大切。そこで点が入らないとすれば、それだけのチームということだ。