■印象に残る「貫け大木スタイル」と書かれた横断幕

Jリーグの、アウエーチームのゴール裏が、少数精鋭状態で「いい声」になる傾向があるのは、皆様御存知だと思う。同様に、数が少なくなるダンマクも、それはそれで印象が強くなる。J2第23節、フクダ電子アリーナでのジェフユナイテッド千葉対京都サンガF.C.の一戦で特に印象に残ったダンマクは、白地に紫でシンプルに文字が書かれた「貫け大木スタイル」だった。

試合前のピッチ上でできるウオームアップ、その短い時間のなかに、三分間の、先発フィールドプレーヤー10人をビブス二色とビブスなしで4対4対2に分けたミニゲームが入る。狭いスペースできびきびとボールを奪い合い、パスを廻す光景を、件のダンマクが見下ろしている。大木武監督もベンチからその様子を見ている。チームには揺るぎがない。一貫している。

コンパクトにしてプレッシャーをかけ、その狭いゾーンでボールを廻す。特徴的なショートパスサッカーは対戦相手にとっての脅威となる。前回の対戦で敗れている千葉は、徹底したカウンターとセットプレーで得点を重ね、3-2でリヴェンジを果たした。

■割り切る勇気を持っていた千葉の戦い

千葉の木山隆之監督は「ホームですけど、捨てるところは捨てて、スペースを消すサッカーを選択しました。勝つことにこだわって、きょうはやってくれた」「同じスタンスで真っ向勝負というより、いいかたちで持たせない努力をした」と言った。
端的には、割り切る勇気を持った、と言い換えることができるだろう。千葉は中長期的な視点を一度傍らに置き、残り半分となった今シーズンのために、最適な選択をした。

J2がパスをつなぐチームに対し、引いてカウンターという対策だらけになるのは、昨季のFC東京包囲網を思い返してもあきらかだ。ではリトリートして、最後はゴール前に全員がベタ引きになるカウンターサッカーに対して、京都はどうすればいいのだろうか?

アディショナルタイムに意地の一発を叩きこんだ中村充孝に、この結果は試合運びの巧拙によるものではなく実力の差かと訊くと、次のように答えられた。
「それでいいと思います。ぼくたちのほうに最初にチャンスがあったと思うから、そこで決めるか決めないかがこのゲーム展開に影響した。結果的にはそう(試合の流れを制したほうが点を獲ったと)言うしかないと思うんですけど、ぼくはそういうふうに(決定力不足と)診ています」
──あのときに決めておくことが重要?
「そうですね、最初の1分のプレーが、最後の90分のプレーにつながると思うので。最後の精度も、最初からしっかりとやっていかなければいけないと、あらためて思いました」

■負けたのはスタイルの問題ではない?

同様の反省は駒井善成にもあった。
「自分たちのミスから失点して、ぼくがしっかりと決めていれば(後半18分、宮吉拓実からのスルーパスにオフサイドなく飛び出した絶好機にはキーパー岡本昌弘にボールを掬われてシュートを撃てず)流れも変わったんですけど、決めきれなくて、相手にセットプレーというかたちで機会を与えてしまう。自分たちで苦しい試合展開にしてしまった。一試合のなかでチームを救うチャンスを決められなかった自分の実力不足に腹が立つので、次にチャンスが巡ってくれば絶対に決めたい」

ちいさな体躯を活かした個人技が際立つ駒井。試合前には急制動の利くスラロームドリブルを実践し、からだの動きを確かめていた。セカンドハーフの頭に、先発したサヌとの交替で投入されるに際して「味方が持ったときとか、相手のゴールキックとかクリアボールをウチが跳ね返したときのセカンドボールだけ、しっかり拾って。あとは自由に」という指示を受けた駒井には、個人技勝負の裁量も与えられていたはずだが、その出来にも納得できていないようだった。