マイナーリーグ
元埼玉西武ライオンズの投手、土肥義弘が、米マイナーリーグからの再起を目指している。
ライオンズからFAになった昨年はメジャーリーグ球団とは契約できず、独立リーグのランカスター・バーンストーマーズに入団したが、代理人のミスで就労ビザがおりず、登板はなかった。今季はボルティモア・オリオールズとマイナー契約を結んだ。
ライオンズからFAになった昨年はメジャーリーグ球団とは契約できず、独立リーグのランカスター・バーンストーマーズに入団したが、代理人のミスで就労ビザがおりず、登板はなかった。今季はボルティモア・オリオールズとマイナー契約を結んだ。
メジャーリーグ傘下のマイナーリーグが、ルーキー・リーグに始まり、ルーキー・アドバンスド、ショート・シーズンA、クラスA、アドバンスドA、ダブルA、トリプルAと、幾重にも重なったピラミッド構造になっていることは以前にも紹介したが(http://blog.livedoor.jp/yuill/archives/51641450.html)、そこでの生活は過酷の一言につきる。特にルーキーリーグなどの下部リーグでは、選手は生活もままならない。
ジム・モリスは1999年、35歳でメジャーデビュー。メジャーまでの長い道のりは、2002年にデニス・クエイド主演で「オールド・ルーキー」(原題「The Rookie」)として映画化されたが、そのモリスはルーキー・リーグ時代について、「ケンタッキー州からウェストヴァージニア州までの山間部の道路を、6時間から8時間、エアコンも無く、35人の男と、トイレの臭いの充満するバスに揺られなくてはならなかった」、「移動後は安モーテルにチェックインし、1日3食バーガーとフライを食べる。1日6ドルと月600ドルの収入では、それが精一杯だ」、「使用するスタジアムの観客席にはファンの姿がほとんど見えず、1つの町で3試合もすれば全員の顔や声を覚えてしまう」と振り返っている。
ただでさえ低い収入は、シーズン期間中しか支払われない。このため選手たちはシーズンオフ、アルバイトで生計をたてることになる。
エリオット・アジノフの短編小説「ザ・ルーキー」は、35歳にしてようやくメジャー昇格を果たしたオールド・ルーキーの話。前出のモリスは怪我もあり一度は野球を諦めたが、この短編小説の主人公マイク・カットナーは16年間、ずっとマイナーリーグでくすぶり続けてきた。
メジャーチームに怪我人が続出したことで、カットナーは16年目にしてようやくのメジャーデビューになったのだが、その打席でマイナー時代のアルバイトの思い出が蘇る。「ガソリン・スタンドの店員、速達便の配達夫、道路工夫・・・みんな、何の役にも立たなかった。ただ冬を過ごし、春を待つだけのことだった。何年も仕事をやってきたが、すべてが愚かな浪費としか思えなかった」。
劣悪な待遇は収入だけではない。モリスのルーキー・リーグ時代、同僚のドミニカ人投手が突然球団に解雇を言い渡された。
故障明けだったドミニカ人投手はマイナーリーグで調整しており、これからと言うときに、ロッカーはすでに整理され、用具の上には飛行機のチケットが1枚置かれていた。
球団がそれまで彼を解雇しなかったのは、故障中の選手は切り捨てられないという理由からで、彼の完治が明らかになると、球団は待ってましたとばかりに首を切ったのだった。
これほどまでにも過酷な環境下では、選手同士、強い絆で結ばれるものだが、マイナーリーグに美談は存在しない。
ドラフトで指名された選手で、メジャーリーグにまで辿りつけられるのは、全体の1%にも満たない。メジャーリーグまでの梯子は狭く、脆い。全員は昇れない。
チームメートは1人残らずみなライバルで、毎年有望な新人たちが押し寄せてくる。メジャーリーグに到達するには彼らを蹴散らさなくてはならず、足元には選手の屍が累々と積み重なっている。
実際、モリスのチームはルーキーリーグを制したが、歓喜の瞬間はあまりにも短かった。彼らの目的はメジャー昇格であり、マイナーリーグでの優勝ではない。自分1人が活躍し、それがメジャーチームのGMの目に止まれば、それでいいのだ。
マイナー選手はさらに、自身とも戦っている。メジャーリーグでは、「体力のピークは29歳」と言われているが、マイナーリーグではさらに3歳早い26歳。26歳までにメジャーに昇格できない選手は、「期待の新人」から「チームのお荷物」に変わる。
そんな苦境を乗り越えメジャー昇格を果たした選手は、石にかじりついてでもメジャーに残ろうとする。「One cup of coffee」とは、メジャーに這い上がってきた選手が短期間でマイナーに逆戻りする様を表す言葉だが、選手は2杯目、3杯目のコーヒーを飲もうと必死だ。
ホーク・ノリスの短編小説「双生児の秘密」は、球団に、いつトレードや解雇を言い渡されても不思議ではない中堅選手の話だが、彼は監督の弱みに付け込んでまで、メジャー定着を図ろうとする。
決して許される行為ではないが、それだけメジャーとマイナーには天と地ほどの差があるということ。マイナー選手が禁止薬物に手を出す気持ちも、わからないでもない。
わが国で目にするアメリカのプロ野球は、言う間でもなくメジャーリーグ。今オフもテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有、シアトル・マリナーズの岩隈久志、ミルウォーキー・ブルワーズの青木宣親、オリオールズの和田毅、入団には至らなかったがニューヨーク・ヤンキースと交渉をしたライオンズの中島裕之などが注目を集めた。
だが、その背後では多くの選手たちが、明日のメジャー昇格だけを夢見、血みどろの死闘を繰り広げているのだ。
ただでさえ低い収入は、シーズン期間中しか支払われない。このため選手たちはシーズンオフ、アルバイトで生計をたてることになる。
エリオット・アジノフの短編小説「ザ・ルーキー」は、35歳にしてようやくメジャー昇格を果たしたオールド・ルーキーの話。前出のモリスは怪我もあり一度は野球を諦めたが、この短編小説の主人公マイク・カットナーは16年間、ずっとマイナーリーグでくすぶり続けてきた。
メジャーチームに怪我人が続出したことで、カットナーは16年目にしてようやくのメジャーデビューになったのだが、その打席でマイナー時代のアルバイトの思い出が蘇る。「ガソリン・スタンドの店員、速達便の配達夫、道路工夫・・・みんな、何の役にも立たなかった。ただ冬を過ごし、春を待つだけのことだった。何年も仕事をやってきたが、すべてが愚かな浪費としか思えなかった」。
劣悪な待遇は収入だけではない。モリスのルーキー・リーグ時代、同僚のドミニカ人投手が突然球団に解雇を言い渡された。
故障明けだったドミニカ人投手はマイナーリーグで調整しており、これからと言うときに、ロッカーはすでに整理され、用具の上には飛行機のチケットが1枚置かれていた。
球団がそれまで彼を解雇しなかったのは、故障中の選手は切り捨てられないという理由からで、彼の完治が明らかになると、球団は待ってましたとばかりに首を切ったのだった。
これほどまでにも過酷な環境下では、選手同士、強い絆で結ばれるものだが、マイナーリーグに美談は存在しない。
ドラフトで指名された選手で、メジャーリーグにまで辿りつけられるのは、全体の1%にも満たない。メジャーリーグまでの梯子は狭く、脆い。全員は昇れない。
チームメートは1人残らずみなライバルで、毎年有望な新人たちが押し寄せてくる。メジャーリーグに到達するには彼らを蹴散らさなくてはならず、足元には選手の屍が累々と積み重なっている。
実際、モリスのチームはルーキーリーグを制したが、歓喜の瞬間はあまりにも短かった。彼らの目的はメジャー昇格であり、マイナーリーグでの優勝ではない。自分1人が活躍し、それがメジャーチームのGMの目に止まれば、それでいいのだ。
マイナー選手はさらに、自身とも戦っている。メジャーリーグでは、「体力のピークは29歳」と言われているが、マイナーリーグではさらに3歳早い26歳。26歳までにメジャーに昇格できない選手は、「期待の新人」から「チームのお荷物」に変わる。
そんな苦境を乗り越えメジャー昇格を果たした選手は、石にかじりついてでもメジャーに残ろうとする。「One cup of coffee」とは、メジャーに這い上がってきた選手が短期間でマイナーに逆戻りする様を表す言葉だが、選手は2杯目、3杯目のコーヒーを飲もうと必死だ。
ホーク・ノリスの短編小説「双生児の秘密」は、球団に、いつトレードや解雇を言い渡されても不思議ではない中堅選手の話だが、彼は監督の弱みに付け込んでまで、メジャー定着を図ろうとする。
決して許される行為ではないが、それだけメジャーとマイナーには天と地ほどの差があるということ。マイナー選手が禁止薬物に手を出す気持ちも、わからないでもない。
わが国で目にするアメリカのプロ野球は、言う間でもなくメジャーリーグ。今オフもテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有、シアトル・マリナーズの岩隈久志、ミルウォーキー・ブルワーズの青木宣親、オリオールズの和田毅、入団には至らなかったがニューヨーク・ヤンキースと交渉をしたライオンズの中島裕之などが注目を集めた。
だが、その背後では多くの選手たちが、明日のメジャー昇格だけを夢見、血みどろの死闘を繰り広げているのだ。
バックスクリーンの下で 〜For All of Baseball Supporters〜
野球は目の前のグラウンドの上だけの戦いではない。今も昔も、グラウンド内外で繰り広げられてきた。そんな野球を、ひもとく
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