22年振りとなるサッカーW杯3次予選の北朝鮮開催。FIFAの常識も通用しない絶対的アウェーで、日本代表はどう戦うのか?

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■85年、金キム・イルソン日成競技場の悪夢が再び起きる?

 11月15日、22年ぶりにザックジャパンは北朝鮮・平壌(ピョンヤン)に乗り込み、“人工芝”の金日成競技場で戦うことになる。これまでホームゲーム2試合を“天然芝”の羊角島(ヤンガクド)競技場で行なってきたにもかかわらず、突然“人工芝”に変更。北朝鮮サイドは、「天候の影響で(羊角島競技場の)芝生の発育が悪く、状態がよくない」ためとウソくさい説明をしている。

「イヤな記憶が蘇よみがえりました」と、ため息交じりに語るのは、サッカー専門誌のベテランS記者。

「金日成競技場といえば、1985年、メキシコW杯アジア予選で日本代表が戦ったスタジアム。そのときはスコアレスドローに終わりましたが、木村和司選手(現・横浜F・マリノス監督)が悪質なファウルを受けて頭を強打、失神するほど壮絶な試合でした」

 当日の金日成競技場の観客数は8万人。そのうち、日本側は代表チーム関係者を除くとマスコミなどたった18名。S記者は悪夢を振り払うように続ける。

「日本の国歌斉唱の時にはスピーカーに突然バリバリとノイズが入り、『君が代』がまったく聞こえない。それが終わると、8万人の北朝鮮サポーターが一斉に『殺せ! 殺せ!』コールでした」

 怖すぎる……。

「それだけじゃない。人工芝には水がまかれておらず、スライディングすれば間違いなくやけどするようなコンディション。さらにフィールドもFIFAのレギュレーションである縦105mではなく112mもあった。スタミナに自信がある北朝鮮の“アウェーの洗礼”でした。同じようなことが起きなければよいのですが……」(S記者)

 いや、いくら相手が北朝鮮でも、さすがに26年前と現在では話が違うはず。だが、北朝鮮情勢に詳しい『コリア・レポート』辺真一(ピョン・ジンイル)編集長はこう懸念する。

「それが、そうとも言えないのが北朝鮮なのです。来年の金日成生誕100年に向けて、“強盛大国の大門を開く”というスローガンで国民が総動員されている。これは軍事だけでなく、文化・スポーツなどあらゆる面でも大国になるというキャンペーンなのです。ところが昨年、南アW杯でポルトガルに7−0で大敗した試合を生放送してしまった。国家のメンツは丸つぶれです。だからこそ、11・15の日本戦で大敗を喫することだけは避けなければならない」

 どうやら、マジで将軍様が国家の威信をかけてザックジャパンをつぶしにくるようだ。


■日本代表が大差で勝てば恐ろしい事態になる?

「ボクが北朝鮮側なら、ボールの空気圧を低めにします。そして人工芝には水をまかない。そうすればボールのスピードが落ちて、ザックジャパンの持ち味である速いパス回しを封じることができます。でも北朝鮮は、そんな技術的な“アウェーの洗礼”では済まさないでしょう」(S記者)

 というと?

「8月29日、北朝鮮代表が来日しましたが、彼らは税関で相当念入りにチェックされたり、試合後もスタジアムのゴミ専用の搬出口から出されたり、怒り心頭だったと漏れ伝わってきています。当然、仕返しされるハズ」(S記者)

 目には目を、ということか。

「具体的には、外国人旅行者同様、ザックジャパンが税関でケータイとパソコンなどの通信機器すべて取り上げられることになります」とは、北朝鮮事情にうるさい山梨学院大学の宮塚利雄教授だ。ホテルに缶詰め状態が予想されるだけに、ケータイがないのはツライ。

「それから、もしパスポートを紛失すると、北朝鮮には日本大使館がないので旅券の再発行ができず帰国できなくなる」(宮塚教授)