■ペルーの布陣と相性の悪かった3-4-3

3-4-3はフィットしないのではないか。実はキックオフ直後から、いやな予感が漂っていた。なぜなら、不慣れなシステムだということ以上にペルーの布陣との相性が悪かったからだ。

ペルーは、両サイドに大きく張り出した3トップを敷いていた。この3人を、同数の3バックで守るにはリスクがある。となると、ペルーのウイングは西と安田が、それぞれマークすることになる。こうなるとサイドの高い位置で数的優位を作るという、3-4-3の長所を生かすことができなくなってしまう。ここに日本の誤算があった。

仮にペルーの意欲が低く、日本が終始ボールを保持できれば、相性が悪くても3−4−3の特性は出せただろう。だが、キリンカップをコパ・アメリカへの重要な試金石と捉えるペルーは、歯応えのあるチームだった。支配率は、ほぼイーブン。そのため西と安田、特に右サイドの西は攻めと守りの狭間で明らかに戸惑っていた。
サイドハーフが敵のウイングをケアし、3バックが敵のワントップを見る。これでは後ろに人が余り、攻撃的な試合運びはできない。

■機能しなかった新しい布陣

日本がボールを持ったとき、手の空いたストッパーの伊野波、または栗原が敵陣近くに進出する場面が2、3度あった。

3バックの一角が後ろから押し出すような形で、サイドの深い位置で西と関口、または安田と岡崎が数的優位を作る。3-4-3を生かした一種の工夫が見られたが、これも功を奏さなかった。サイドチェンジの長いパスが、ラインを割っていたからだ。

結局、3-4-3は機能しなかった。
筆者が残念に思うのは、テストが失敗したということより、選手たちがシステムに縛られていたことだ。
現行のシステムが機能しなければ、自分たちの判断で最善の策を導き出して解決する。フル代表に選ばれるくらいの選手なら、それくらいのことができて当然だと思うからだ。例えばベンチを説得して、4-4-2にする。こういったシーンを見たかった。

■ワールドカップ予選に向けて、オプションを増やせるか

それにしても、ザッケローニが前半で3-4-3をやめてしまったのは意外だった。新たなオプションを作ろうとするのなら、じっくり腰を据えてやるべきではないだろうか。

しかも解決策は、本田を投入しての4-2-3-1。これはいちばんの安全策といっていい。

キープ力のある本田を投入したことで、見違えるようにパスがつながり始めた。だが、これはアジアカップの時点で、すでにわかりきっていることだ。しかも日本は流れを変えながらもゴールを奪えず、逆に終盤になるとペルーの猛攻に浮き足立ってしまった。

筆者は、このキリンカップをワールドカップ予選に向けてオプションを増やす機会だと考えている。このオプションが指すものは、システムだけではない。

アジアカップは優勝したものの、レギュラーと控えの格差が顕著だった。層が厚いとはいえず、レギュラーに何かあった場合に備えて、遜色のないプレーができるバックアップを育てておかなければならない。

だが、このペルー戦では3-4-3は中途半端に手をつけただけ、選手個々を見ても海外組の底力が印象づけられたに過ぎない。貴重な強化試合、その第一弾は結果も含めて収穫のないまま終わってしまった。

■選手採点・寸評

【GK】
川島(6.5)終盤の大ピンチに好守連発。敗戦の危機を救った。

【DF】
今野(6.5)最終ラインに欠かせない存在に。統率力も出てきた。
伊野波(5.5)危なげないプレーを見せたが、もったいないミスも。
栗原(6.0)苦しい局面でもしっかりと踏みとどまり、無失点に貢献。
安田   5.5 前に出る姿勢は光ったが、ボールを失う場面も多かった。