原発「決死隊」126人が志願 ボランティアの退役技術者たち
東日本大震災から2か月が過ぎたが、東京電力福島第1原子力発電所の事故現場では一刻も早い事態の収束のため、懸命の作業が続けられている。そうした中で、現役を退いた技術者らが呼びかけている「福島原発暴発阻止プロジェクト」に、100人を超す技術者が集結し出番を待っている。いわば「原発決死隊」で海外のメディアの評価も高い。
2011年5月18日時点で、現場で作業してもよいという参加者は126人、プロジェクトの賛同者や応援する人たちも557人に達した。
原発建屋をつくった人もいる
福島第1原発の1号機から4号機は、それぞれ損傷の程度も異なり、高い放射線量などに阻まれて現場の状況把握にバラツキがあるのが現状だ。1号機は原子炉建屋への作業員の立ち入りなど作業が先行している半面、メルトダウン(炉心溶解)を起こしていたことや格納容器の中の水位が想定より低いことが判明している。
蒸気が充満していて内部の状況把握が遅れている2号機、汚染水の濃度が高い3号機、4号機には連日の注水作業が続けられている。
そんな現場では毎日、若い作業員が防護服にマスクといういでたちで作業している。なかには十分な知識や技能をもたず、また現場の危険性について、あらかじめ的確に知らされることもなく送り込まれるという事態が起きている。
プロジェクトの発起人である山田恭暉(72)さんは、「事故を収束するには長期にわたって機能するような高度な冷却装置が必要不可欠です。その装置の建設には機械ではなく人手が必要ですし、作業は放射線の中で行わなければなりません。その役目を退役者が担うのです」と話す。
現場での作業に耐えられる体力と経験のある、60歳以上に呼びかけをはじめて約1か月半がすぎて、参加者は126人にまで達した。職種は大学教授や設計技師、溶接工に大工やとび職。クレーン運転手も、福島原発の建屋の建設に携わったという人もいる。「バラエティーに富んでいます」と、山田さん自身もその広がりに驚いているほどだ。
海外メディアが高い評価
山田さんらは「人の知識と身体能力には個人差があります。だからこそチームとして機能すべきで、個々の技能に応じて最適な持ち場、最適な作業内容が振り分けられるべき」と考えている。
作業には多くの交代要員が必要なこともわかっているので、多種多様な参加者が多数手を挙げたことは心強い。
「福島原発暴発阻止プロジェクト」については海外メディアも取り上げていて、ドイツのテレビ局「Das Erste」のウェブサイトでは「退役技術者たちが最大級の原発事故に立ち向かう」の見出しで、「この行動は自己顕示欲とか、神風特攻隊といったものではなく、綿密に計画されたもの」と評価している。
もちろん、プロジェクトは自ら志願した人ばかりで報酬を目的にしていないボランティアではあるが、だからといって、放射線による身体への影響も含めて適切な安全確保が必要になる。政府や東電のきちんとした対応が待たれるところだ。
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