インビクタス/負けざる者たち<br>(c)2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

写真拡大 (全11枚)

「スラムダンクの続き」など、スポーツ系人気ブログ「Kの部屋」を運営・執筆するブロガー「編集者・K」さん。雑誌、WEB編集者の経験に裏打ちされた、さまざまな競技に対する深い知識や独自の解釈により、根強いファンを獲得。一日平均5万人以上が訪れるという数字が、多くの人から評価されている何よりの証拠だろう。今回はKさんに7月14日にブルーレイ&DVDセットが発売となる「インビクタス/負けざる者たち」を観た感想を語ってもらった。くしくもインタビュー日は6月29日。映画の舞台である南アフリカで開催中のサッカーW杯にて、日本代表がベスト8を掛けて挑んだパラグアイ戦の10時間ほど前のこと。

――ブルーレイ&DVDセットとしてリリースされる「インビクタス/負けざる者たち」をご覧になって、率直な感想はいかがですか?

編集者・K(以下K):スポーツを題材にした映画作品って「ROOKIES」や「ウォーターボーイズ」といった、素人集団が集まって上手になっていく物語というイメージがあったんですよ。みんなで集まってワイワイ、みたいな。この「インビクタス」も、下手くそなラグビーチームが練習を重ねて勝ち進むような、成長物語なのかなって勝手に思ってましたが、全然違いましたね(笑)競技としてのラグビーはあんまりフィーチャーされることもなかったなという印象ですから。

――南アフリカですが、映画の中では大統領のネルソン・マンデラとか、人種隔離政策のアパルトヘイトなどが出てきますけど、日本人からすると、ちょっと遠い国の話という印象かもしれませんね。

K:日本はほぼ単一民族国家であって、人種差別のない環境で育った人がほとんどだから、差別ってリアリティーが薄いでしょう。逆にこの映画で初めて知りましたもん、黒人初の大統領になったマンデラって27年も牢屋に入ってたんだ!って。このラグビーW杯の南アフリカ大会が95年、大統領就任が94年でしたっけ?なんとなく学校で教わったかな、ぐらいの記憶ですよね。

――この「インビクタス/負けざる者たち」は、事実に基づく物語です。ストーリーとしては「誰も優勝なんて無理だ」と思われていたラグビーチームが、自国開催のW杯で躍進する姿を描いていますが、実際にスポーツの試合を数多くご覧になってきて、「奇跡」と思える試合や出来事はありましたか?

K:まさに今かもしれません、今回のサッカーW杯の日本代表です。まず、今回の予選グループで2つ勝ち星を挙げた、これは奇跡ですよ。だからかもしれませんが、スプリングボックス(劇中に登場する南アフリカチームの愛称)と岡田ジャパンってどことなくダブって見えたんですよ。練習試合もボロボロ、とにかく勝てない、誰からも注目されない、みたいな状況もね。

――たしかに、言われてみるとよく似てますね。

K:映画の中での話なんですけど、最初は多くの人が自国の南アフリカではなく相手チームを応援してるんですよ。「どうせ勝てないんだから」って。さすがに日本で日本以外を応援する観客は少ないかもしれませんが、「岡田ジャパンなんて負けちまえ!」と思っている人達は少なからずいた訳じゃないですか。練習試合に負けていた頃のライブドアブログを見れば分かりますよ(笑)。「日本サッカー協会の間違いを認めさせるために、岡田ジャパンは負けてしまえ!」という論調もかなりありましたからね。テストマッチ4連敗、「監督なんて不合格」とかってバッシングされていた状況は似ているなと思いました。

――ちょっと話を変えますが、ネルソン・マンデラ大統領とか、キャプテンのピナールとか、リーダーと呼ばれる人が物語のキーマンとして登場しますが、リーダーの資質とは何だと思いますか?

K:この映画に関しては、戦術とかスポーツ的な側面ではほとんど描かれていないわけで、どちらかというと「黒人と白人が手を取り合って戦おう!」みたいなことを監督が説いて、キャプテンのピナールもその声に応えてチームを鼓舞する感じですからね。もしかすると、大統領ぐらい地位のある人が自ら率先して代表チームを応援するような国だったら、スポーツってもっと盛り上がるんでしょうね。そこいくと2002年サッカーW杯のときの小泉純一郎元首相はすごかったですね。これは『6月の勝利の歌を忘れない』というDVD作品で残っているのですが、2002年のサッカーW杯で日本代表がロシア戦に勝ったとき、小泉さんがロッカールームまで入ってきて、選手を激励するシーンがあるんですよ。選手とチームスタッフみんなで「ニッポン!ニッポン!」とか「コイズミ!コイズミ!」なんてコールしたりで大騒ぎなんですよ。そういう姿って、単純にいいなと感じるじゃないですか。国家元首が一国民として、スポーツの場で盛り上がっている姿って、なかなか見せないですからね。いい意味で政治家はスポーツを利用すればいいと思いますよ。