編集者・K「スポーツでも仕事でも国でも、チームの結束に必要なのは“成功体験”」
――指導者、リーダーという言葉が出た所で、今までご覧になってきたスポーツやチームの中で、実在する優秀な監督やキャプテンは誰か思い浮かびますか?
K:ホント、個人的にですけど、史上最も美しいサッカーをやっていたと思うチームが、1995年から1996年シーズンのアーセン・ベンゲル監督がいた頃の名古屋グランパスエイトなんですよ。最高のチームだし、最高の監督だし、さらにエースはストイコビッチと、何もかも最高でしたね。――映画の中には「私が我が運命の支配者、我が魂の指揮官。」など様々な名言が出てきますよね。
K:指導者というか、上司としてリーダーとしてキャプテンとして大事な言葉が、随所に散りばめられてますよね。あとは、人心掌握術だったり。例えば代表チームが、みんなで黒人の子供達にラグビーを教える場面で、チームの中には「そんなことをやるほど暇じゃないんだよ!」と言う選手がいたましたけど、いざやってみると笑顔じゃないですか。そういう姿が描かれてるのはいいですよね。――そうやって、チームとして色々な経験を重ねていく内に、結束して強くなると。
K:結局、色々あってチームが結束する理由は、やっぱり試合に勝ったからだと思います。勝ち進んでいく中でチーム内で信頼し合って結束が高まるってことがあるじゃないですか。これは仕事にも言えることで、事業が失敗続きだったらチームワークなんて深まるわけないと思うんです。小さなことでもいいし、もちろん大きなものでもいいですけど、「やればできるんだ!」とチームに思わせること、成功体験を重ねていくことで、一つになっていくことってあると思いますね。結局、自信をつけさせる手っ取り早い方法って、勝負に勝つことですよ。今回のサッカー日本代表も、まさにそうですよね。――日本に限ったことではないかもしれませんが、スポーツの場合、勝つことに対して、どうしても穿った論調になりやすいということはありますよね。
K:何の競技でもそうですが、日本代表チームが大会に出場して、海外の強豪チームと対戦する時って、「まさか日本が勝つわけない」ぐらいで観てる場合が多くないですか?自分達というかプレーする側、観ている側共にですけど「勝てる」と思って観ているかどうかって大事だと思うんですよ。野球、柔道あたりは勝気が伝わりますが、バスケットで日本がアメリカに勝てるなんて思ってないと思うんですよ。今回のワールドカップもそうでしょう。自分達は相当低いレベルにいる印象が強くて、なぜか「日本が勝ったらダメだ」という雰囲気もあったりしますからね。いやいや、素直に応援しようよと思いますよ(笑)。――この作品で、クリント・イーストウッド監督が伝えたいメッセージは何だと思いますか?
K:「最終的に、この映画の主役って誰なんだろう?」と考えた時に多分、大統領でも選手でもなくて、観客。つまり国民なんじゃないかなと思います。最後まで、チームだけじゃなく、大統領の側近とか、警備員とか、観客がしっかりと描かれているんですよ。事実は分かりませんけど、南アフリカではまだ差別があるかもしれませんけど、劇中の話としては勝ち進んでいくラグビーチームがあって、チームと国民の結束が高まったという所ですよね。この出来事を通して、一番変わったのは国民だった。「こうやって国民が変わっていったんだよ」という所が観るポイントでしょうね。すばらしい大統領がいて、勝ち進んだチームもあったけど、最終的に成長したのは国民だということでしょうね。――これからブルーレイやDVDを見る人に向けて、オススメのポイントをお願いします。
K:人種差別を扱う映画って、どうしても人間の嫌な部分を見ないといけないのですが、本作は決してネガティブな内容ではなく、嫌な人間や場面がとても少なく、ノンストレスで観られる作品です。しかも「事実」で、スーパーハッピーなエンディングを迎えますから。爽快でポジティブな映画なので、落ち込んだり、嫌なことがあった時に何回でも見たくなる映画です。ブルーレイやDVD向きだと思いますよ。・「インビクタス/負けざる者たち」特集
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