松井秀喜のエンゼルス移籍が報道されたあと、松井を引き止めなかったヤンキースに対して、勝負強く野球人としての品格を備えた選手を手放したのは間違いだというファンからのコメントが相次ぐなか、ニューヨークタイムズが「頼りになる選手もいつかは去らなければならない」とするコラムを12月19日付で掲載した。

 1920年にレッドソックスからベーブ・ルースを獲得して以降、ヤンキースはやりたいことをほぼやってきた。今オフ、ヤンキースは松井とジョニー・デイモンというふたりの『頼りになるベテラン』を放出した。

 もう少し若い選手を加えようというのが、ヤンキースのやり方だ。27度目のワールドシリーズ優勝に貢献したふたりを切り捨てたのは、あまりに冷たいと思えるかもしれないが、松井とデイモンも承知の上だろう。
  
 松井は縦縞のユニフォームに袖を通した瞬間から、完璧なヤンキーだった。体も大きく、冷静で、日本人スラッガーとして活躍し、2009年のワールドシリーズ最終戦で6打点を挙げた。

 ほとんどの日本人選手が多少は英語を話すのに、松井は専属の通訳を介し、常に紳士的だった。グラウンドでの姿が、おそらく彼のすべてを語っていたのだろう。

 デイモンもすばらしい選手だった。ケガをおして試合に出場し、チームの勝ち負けに関係なく、メディアに快く対応してくれた。しかし、彼もまた、28度目のワールドチャンピオンを目指すヤンキースに残ることはないだろう。

 松井を、ほかの選手と置き換えられないというファンや、デイモンの要求額を支払うようにすすめるファンもいるが、ヤンキースは「選手を放出するならば、1年遅れるよりも、1年早めのほうがよい」という考え方をしている。

 ブライアン・キャッシュマンGMは、その考え方に従った役割を演じている。松井とデイモンがこのやり方に反論していないように、これも野球なのだ。