未成年の喫煙が問題になっている昨今。
街でも、明らかに未成年と思われる、幼い顔立ちの子供が、紫煙をくゆらせている場面を見かけることも多い。
そんなゆゆしき問題に対処するため、全国に先駆け、鹿児島、宮崎両県で、1日から、成年識別ICカード「taspo(タスポ)」対応のたばこ自販機が導入された。
しかし、この自販機、喫煙できる年齢の大人を巻き込んでの、ちょっとした混乱を巻き起こしている。

全国に先駆け、鹿児島・宮崎両県で、1日から、成年識別ICカード「taspo(タスポ)」対応のたばこ自販機が導入された。
これは、喫煙者は事前にカード発行を申し込み、そのカードの認証なしでは、タバコを販売しないという自動販売機のシステム。年齢を確認できる対面販売と異なり、自動販売機では、未成年のタバコ購入が容易なことから、導入された。

しかし、地域限定導入ゆえの混乱が起きている。
頭を抱えているのは、観光・ホテル業者。
県外客の利用が多いホテルや旅館では、カードを持たない宿泊客の代わりに、従業員が自らのカードで代理購入するなど、「自動販売機でありながら対面販売よりもさらにややこしい」という、妙な事態が起こっている。
「どうせなら全国一斉に始めてくれればいいのに」。関係者の不満の声も無理はない。

ホテルのフロントには、毎日のように「どうすればタバコが買えるのか」と問い合わせがあるという。制度を知らず、自動販売機の前で途方にくれる旅行者も多い。タバコを吸わないが、代理購入のために「taspoカード」を申し込む関係者も出始めた。
ホテル側は、売店での対面販売を、急遽始めたが、閉店する午後10時以降は、カードを持っている従業員が対応するしかない。「taspoカード」は、他人への譲渡や貸与を禁じているが、それではサービスが成り立たないため、やむをえず臨時的な運用で、急をしのいでいる状況だ。
関係者は、「全国で導入されるまで、施設内の自販機だけでも機能を外せないものか」と柔軟な運用を注文している。

カードを発行する、日本たばこ協会の未成年者喫煙防止対策室の田中仁道さん(35)は「年齢確認し、サービスの一環として従業員が代わりに購入するのはホテル・旅館側の判断」と、代理購入は問題にならないとの考えを示したうえで、「協会としては、対面販売での対応をお願いすると同時に、両県以外の人にもtaspoカードをPRするしかない」と話した。

未成年の喫煙防止には、自動販売機での販売をブロックすることは、画期的な策だと思われる。しかし、限定導入の混乱に乗じて、代理購入がまかり通る風潮がいきなりできあがってしまったら、せっかくの新システムの意味がまったくなくなってしまう。
限定導入でのテストで問題がないのなら、早期の全国導入を検討したほうがよいのではないか。そして、この新システムを骨抜きにしないためには、両地域に旅行する喫煙者の大人にも、柔軟な理解を示す「オトナの余裕」が求められるのではないだろうか。