防衛次官退職金7000万 公務員「超安給料」説の?
防衛専門商社から接待を受けていた防衛省の守屋武昌前事務次官(63)が受け取った7,000万円以上とされる退職金に批判が出てきた。キャリアと呼ばれる高級官僚はひどい安月給で働き続け、「天下り」でもしないと報われない。こんな一般的イメージとはまるで違う姿だった。
06年春まではもっと高額だった!
石破茂防衛相は2007年10月23日、閣議後の記者会見で守屋氏について「在任中に発覚しなかったからといって退職金を丸々受け取っていいとは思わない」と述べ、自主的に退職金を返納するよう求める考えを示した。
守屋氏と言えば、小池百合子防衛相(当時)と人事を巡る「バトル」を繰り広げたことが記憶に新しい。03年夏から07年8月末まで異例なほど長期に渡って防衛事務次官に就いていた実力者だ。防衛省HPを見ると組織表が掲載され、防衛大臣以下、防衛副大臣、大臣政務官の次に事務次官が登場する。事務次官は、政治家ではないいわゆる「事務方」のトップだ。
石破防衛相の発言を伝えるニュースの中で、スポーツ紙や夕刊紙が守屋氏の退職金について「7,600万円ほど」「7,000〜8,000万円」などと報じた。
J-CASTニュースは10月24日、防衛省に守屋氏の退職金額を質問したが回答は「個人情報なので公表していない」とのことだった。次に総務省に国家公務員の退職金のモデルケースについて質問すると、事務次官で勤続37年59歳で退職した場合7,594万円になるそうだ。守屋氏の勤続は約36年なので、モデルケースに近い額になりそうだ。
ちなみに局長クラスのモデルケースは勤続34年56歳退職で5,955万円、一般の課長クラス、勤続38年60歳定年で3,278万円だ。モデルケースのうち事務次官と局長は、民間の「役員」に当たると考え、課長以下の場合とは異なる計算式を使うそうだ。06年春からの新制度による数字で、例えば事務次官は以前の制度ではもっと高額だった。
7,600万円の退職金は民間と比較するとどう映るのか。人事院が06年11月に発表した資料によると、民間の退職一時金平均は1,445万円で、国家公務員の退職手当は平均2,738万円だ。もっとも人事院は、民間の厚生年金基金など企業年金と、制度が近く廃止される公務員の「職域加算」をそれぞれ退職金と合計した額を「退職給付総額」として発表しており、この算定では民間2,980万円、公務員2,960万円で民間の方が20万円高いという結果だった。この発表に対し、自民党幹部らから「比較方法に問題がある」と批判が出たため、企業年金などの「本人負担額」を新たに計算に入れた「参考値」を07年に入り改めて公表した。結果は民間3,039万円、公務員3,181万円と逆に公務員が142万円多くなった。
民間並みはもらっている
人事院の調査に対しては、民間では50人以上の企業を対象としていることから「中小企業を含めた厳しい実態を反映していない」という批判も依然残っている。また、人事院の調査は、民間、公務員とも「役員クラス」の数字は計算に入れていない。事務次官の退職金の数字は、この調査には反映していないという訳だ。人事院によると「役員クラス」の平均の数字をまとめた資料はないという。
民間役員の退職金についてJ-CASTニュースが労務行政研究所(東京)を取材した。05年春に「労政時報」で公表した「役員報酬・賞与、退職慰労金の最新実態」によると、主要企業の「副社長以上」の平均は8,568万円、専務3,627万円など役員全体2,810万円だった。「中堅・中小企業」の役員全体の平均は1,194万円だった。合計134社を調査した。
役員は一度社員としての退職金をもらった上で退職慰労金を受け取ることが多い。例えば人事院参考値の民間の「退職給付総額」と主要企業専務の平均退職金額を足すと、6,666万円になる。荒っぽい試算になるが、守屋氏の「退職給付総額」を退職金7,600万円プラス442万円(一般公務員職域加算分)とすると8,042万円という数字が出てくる。
もっとも、役員の退職慰労金は廃止する企業が増えている。松下電器産業は06年に廃止している。06年春の「労政時報」の「役員報酬・賞与、役員改革の実態」によると、退職慰労金制度がない企業が30.2%もあった。うち8割近い企業は「以前はあったが廃止した」と答えている。上場企業と「上場企業に匹敵する」企業63社の回答から分析した。
結局、国民の目に7,600万円の事務次官の退職金は「高い」と映るのか「妥当」と見えるのだろうか。国家公務員の退職金に限らず、年収問題を含めた公務員への批判については、J-CASTニュースが07年に報じた「バスの運転手の3割が年収1,000万円 神戸だけじゃない給料の『官民格差』」(6月29日)や「東大卒キャリアいなくなる? 官僚バッシングに賛否両論」(8月25日)に寄せられたコメント欄で、批判と擁護論が激しく対立している。