国際シンボルマーク(日本障害者リハビリテーション協会のホームページから)
「健常者が車いすマークのついた身障者用の駐車スペースにどうしてクルマを止めるのですか」──。車いすを積んでクルマを運転する山田州さんは、駐車場に車いすを降ろすだけの十分な空きスペースが見つからず、何度用を果たせずに家に帰ったか数え切れない。こうした声が、障害者関係の団体や地方自治体などに毎日のごとく寄せられるが、法律が整備されていない現状では、一般ドライバー個人のモラルに頼らざるを得ない。その一方で、「佐賀県パーキングパーミット制度」のように、許可制を導入して障害者のための駐車場を確保しようとする動きが注目されている。

 日本障害者リハビリテーション協会(東京都新宿区)には、「車いすマークを提示しない健常者らしいドライバーが、障害者用駐車スペースに駐車しているのでなんとかしてほしい」「カーショップで販売している車いすマークは偽物ですか」「『四つ葉マーク』を提示したら、車いすマークの提示を求められ、駐車を許可されなかったがどうしたらいいのでしょう」など、様々な苦情や問い合わせが寄せられる。同協会では毎回、そういった苦情や問い合わせに対して、車いすマークの使用目的や障害者の駐車場問題の説明を行っている。

 同協会総務部の村上博行課長は「このマークは、障害のある方が利用できる建築物や公共輸送機関であることを示す世界共通の国際シンボルマークで、障害のある人が車に乗車していることを周囲に知らせる表示に過ぎず、駐車禁止を免れたり、障害者専用駐車場が利用できたりするといったことの証明にはなりません」と同マークが間違った使われ方をしていると指摘する。

 車いすマークは同協会が管理、製造・販売を外部に委託しており、地方自治体を始め、福祉・介護関係団体などのほか、全国のカーショップでも販売されている。障害者手帳などの提示を求められるわけでもなく、誰でも購入が可能だ。マークには、趣旨を説明したメモが添付されている。健常者がこのステッカーを購入して自分の車に張り付け、障害者用の駐車場を利用することは村上課長の言うとおり、マークの誤用であり、場合によっては悪用と呼ばれても仕方がない。 

 道路交通法で認められた車に表示できるマークには、◆身体障害者や報道関係者などの路上駐車禁止を除外対象とする指定車マーク、◆身体障害者を表す四つ葉マーク、◆高齢者マーク――などがある。障害者の中には「協会が販売・管理に乗り出し、地方自治体の福祉課や障害者関係の団体などに限った許可制を導入してほしい」との声もあるが、協会設立の目的、また、協会内で実際にこのマークを担当する職員が3人という現状を踏まえると、国内全部を管理するのは無理な状況だ。

 駐車場問題に関する障害者からの苦情を受けて、地方自治体の中にも対策を講じる県がある。栃木県は2000年1月、「難病患者などの身体障害者駐車場の利用のための専用マーク」の交付を始めた。特定疾患対策研究事業の対象者と慢性関節リウマチ患者から希望者を募って、県有施設の身体障害者駐車場を優先的に利用できる許可証を発行した。栃木県では現在、これまでの見直し作業と、今後、一般の障害者まで範囲を広げるという検討を行っているという。(つづく)

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