アメリカの大手玩具メーカーであるマテルが権利を有するイギリスの幼児向けアニメ「きかんしゃトーマス」は、日本でも1990年から放送されている人気番組で、当時はフジテレビ系列の「ひらけ!ポンキッキ」の中で放送開始となり、2019年時点ではNHK Eテレで「きかんしゃトーマスとなかまたち」として放送されています。そんなきかんしゃトーマスを、「なぜか最近ゲームのMODとして頻繁に見かけるようになった」ということで、その理由を海外メディアが探っています。

Why are people modding Thomas the Tank Engine into video… - The Face

https://theface.com/culture/why-are-people-modding-thomas-the-tank-engine-into-video-games

1983年公開のディズニー映画「Something Wicked This Way Comes」や、1994年発売の「ファイナルファンタジーVI」では、列車がホラー要素と関連付けて描写されています。このように列車を恐怖の対象として見るようになったのは、1895年にフランスで製作された白黒サイレント映画の「ラ・シオタ駅への列車の到着」が最初であるとする説があります。このサイレント映画はわずか50秒程度の定点映像ですが、公開当時は「列車がスクリーンを突き破って飛び出してくるのでは」と観客を怖がらせたと言われています。

L'Arrivée d'un train en gare de La Ciotat 1895 - YouTube

そんな最新の事例として、海外メディアのThe FaceはゲームのMODときかんしゃトーマスの関係を挙げています。The FaceはきかんしゃトーマスMODが近年流行していることについて、「ゲーム改造コミュニティにおける狂気のひとつ」と記しています。

特にきかんしゃトーマスをゲーム内に登場させるMODが流行するようになったのは、2013年頃からだそうです。当時、「The Elder Scrolls V: Skyrim」に登場するドラゴンをきかんしゃトーマスに変身させてしまうMODが人気を呼びました。

Skyrim: Thomas the Tank Engine mod - YouTube

他にも、「グランド・セフト・オートV」でもトーマスMODが配布されており、最近だと「バイオハザード RE:2」のタイラントをきかんしゃトーマスに変身させるMODや……

バイオハザード RE:2のタイラントを「きかんしゃトーマス」に変身させるMODが登場し「逆に不気味」と話題に - GIGAZINE



「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(隻狼)」のボスキャラクターをきかんしゃトーマスに変身させるMODが話題となりました。

あのきかんしゃトーマスを人気アクション「SEKIRO」に登場させるMODが登場、血を流し荒れ狂うトーマスが恐怖 - GIGAZINE



最初にThe Elder Scrolls V: Skyrim向けにきかんしゃトーマスMODを作成したゲームデザイナーのケヴィン・ブロックさんは、「正直に言うと、すべてが自然発生的なものでした。友だちがiPhoneのゲームの中からリッピングした『きかんしゃトーマス』のモデルデータをくれたので、友だちのために何ができるか考え、30分ほどかけてドラゴンの代わりにトーマスを表示させるMODを作ったんです。私も子どものころはトーマスの絵本を読みましたが、大人になってからはトーマスについて考えることは一切ありませんでした。ただ、『最もおかしなことは何だろう?』と考えた結果出てきたのがトーマスだっただけです」と語っています。

もともと列車関連のMOD製作で実績のあったブロックさんですが、実際に彼が有名になったのはThe Elder Scrolls V: Skyrim向けにトーマスMODを製作してからでした。ブロックさんは、「ある時点で、ポップカルチャーの集団意識が、『MOD』イコール『きかんしゃトーマス』となったのです。そしてその時点で、変更可能なものすべてをトーマスに変えるのに十分な力がMODコミュニティには備わっていました」と語り、なぜトーマスMODが流行ったのかを分析しています。

当然のことながら、特定のキャラクターを使用許可を得ずに別のゲームに投入することは、著作権を侵害する危険性があります。しかし、MODのような改造行為であっても利益を目的としていない限り、フェアユースの範疇であると見なされるため、大きな問題は起こらないそうです。それでもトーマスMODを最初に作ったブロックさんは大変な目にあったそうで、「マテル(トーマスの権利元)は現時点では私に死んで欲しいと思っているでしょう。これは、Fallout 4でトーマスMODが通常のウェブサイトでは見つけられないのと同じ理由です」と述べました。

また、ブロックさんはマテルがマケドニアの法律事務所を使って、「ブロックさんのMODがマテルのトーマスブランドを縮小させた」として、YouTube上にアップロードされているトーマスMODを削除するように通知してきたことも明かしています。

Really Useful Fallout - YouTube

「バイオハザード RE:2」向けにトーマスMODを製作したZOMBIΞALIさんは、「MODが大きな話題となったあと、私はかなり高い評判を得ることができました。そして頻繁に、注目を集めるためにMODを作る『MOD製作者』だと揶揄されるようになりました。しかし、実際はMODを製作したのはアレが初めてのことでした」と述べ、トーマスMODを製作した際の反響の大きさ、そして妬みの声について語っています。

ただし、基本的にMODコミュニティの反応は「概ね前向き」とのこと。その理由は有名なキャラクターのMODを製作して注目を集めることが、ゲームやMODをより多くの人々の目に留まらせるために必要なことであると製作者たちが理解しているからだそうです。

ブロックさんも、「より多くのユーザーがトーマスMODを手に入れるようになっていますが、一般ユーザーが別のMODを注目するようになるというケースは決して多くありません。どちらかと言えば、私が作成したジョークのようなMODがSNSなどで流行し、それが私の別の作品を宣伝することにつながるケースの方が多いように感じます」と述べています。