松本薫さんから手渡しされた「Darcy's」のアイス(筆者撮影)

写真拡大

引退報告と同時にセカンドキャリアについて発表するという衝撃的な段取りで大いに話題となった、ロンドン五輪柔道金メダリスト松本薫さんの「アイスクリーム屋」への転身。

松本さんが勤める新店舗「Darcy's(ダシーズ)」がオープンを迎えた12日には、開店前から100人を超える長蛇の列ができ、大変なにぎわいとなりました。筆者も早速「Darcy's」を訪れ、自慢のアイスをいただいてきました。アッサリとしたくちどけとサッパリした甘さで、ペロリと食べられる軽やかさでありながら、しっかり濃厚な食感があり、美味しくいただくことができました。
(筆者撮影、松本薫さんから手渡しされた「Darcy's」のアイス)

しかし、若干気になる点も。

同店では松本さんの現役時代の経験などを踏まえ、「罪悪感なく食べられるアイスクリーム」を販売するとしています。配布されたチラシにも使用している材料の説明において「脂肪燃焼・むくみ改善・アンチエイジング」などと謳っており、健康志向を持った商品だということが伝わってきます。そのように「食べても罪悪感がない」アイスとするために、同店の商品は乳製品を一切使用せずに作られているとのこと。乳製品ナシであの濃厚さや「アイス感」を出しているのは大変素晴らしいことなのですが、これを「アイスクリーム」とするのにはひとつ問題があります。

日本におけるアイスクリームとは、食品衛生法に基づく厚生省令である「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」によって定義されています。これにおいてアイスクリーム類と呼ばれるのは乳固形分を3%以上含むものであり、そのなかでも特に「乳固形分を15%以上、うち乳脂肪分を8%以上含むもの」をアイスクリームと呼ぶのです。乳固形分が減るごとに「アイスミルク」「ラクトアイス」と区別され、3%未満のものは「氷菓」と定義されます。つまり、乳製品不使用の「Darcy's」の商品は、すべて「氷菓」と定義されるものなのです。

また、アイスクリーム類および氷菓の表示に関しては、消費者庁と公正取引委員会の合意のもと「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」という規約が定められています。業界自主規制という扱いではありますが、ラクトアイスと氷菓においては商品名に「ミルク」「MILK」の文字を使ってはならないと定められています。「Darcy's」の商品はあくまでフレーバー名としての記載ではあるものの、「ココナッツミルクチョコクッキー」とミルクの文字を含むアイスクリーム類と紛らわしい表示となっています。ちなみに、先行他社のブルーシールアイスクリームにも同様にココナッツミルクを用いたフレーバーが存在しますが、こちらは「ココナッツ」というフレーバー名となっており、この規約に抵触しないように意識されています。

省令も公正競争規約も罰則があるものではありませんが、長くアイスクリーム屋をつづけ、オンラインショップ等の展開も進めていく想定ならば、妙な横槍を受けないためにも、意識しておく必要があるものでしょう。

「アイスクリーム作ります」という松本さんの言葉で世間にも爆発的に認知された「Darcy's」のアイス。乳製品不使用という商品の最大のウリを正しく伝えるという意味も込めて、改めて「氷菓作ります」で再告知をしていただくとよいのではないでしょうか。「野獣アイス」より「野獣氷菓」のほうが何らかの必殺技みたいな響きも出て、より松本さんらしい商品になるかもしれませんしね。

文=フモフモ編集長