W杯2連敗の韓国、“戦犯”探しに躍起 PK献上のFC東京DFに向けられる厳しい視線
第2戦のメキシコ戦でDFチャン・ヒョンスが痛恨のPK献上
2連敗の戦犯は誰なのか――。
韓国では今、そんな論争がネット上の記事にあふれている。
ロシア・ワールドカップ(W杯)初戦で、韓国はスウェーデンに0-1で敗戦。DFキム・ミヌ(尚州尚武)が不用意なスライディングタックルでPKを与えてしまい失点を喫した。そしてその悪夢は、第2戦のメキシコ戦でまたしても起こってしまった。
前半24分、ペナルティーエリア内でDFチャン・ヒョンス(FC東京)がスライディングしたところ、相手が蹴ったボールが手に当たってしまいPKの判定。この失点から試合運びが難しくなってしまったのは否めず、後半21分にも追加点を与えてしまった。同アディショナルタイムにFWソン・フンミンの強烈な左足のミドルシュートで一矢報いたが万事休す。1-2で敗れた韓国は、最終戦のドイツ戦にわずかな望みをつなぐ形になった。
韓国メディアは、今回の敗戦の矛先を真っ先にチャン・ヒョンスに向けている。
サッカー専門誌「ベストイレブン」は「チャン・ヒョンスは技術的に見ても、代えがきかないディフェンダーと評価されている。A代表チームコーチやサッカー専門家たちの全般的な見解がそうだ。だが、メンタル的にブレていて、実力を発揮できない状態ならどうか? よりによって、歴代W杯代表チームと比較して、DFの比重が大きいチームにもかかわらずチャン・ヒョンスに固執しているならば、その判断は正しいのか」と疑問を投げかけている。
涙のチャン・ヒョンス、韓国代表OBも辛辣なコメント
さらに同誌は「選手には過酷な評価かもしれないが、今回の失点の状況では、その原因となったチャン・ヒョンスが見せた二度のタックルは敗因の決定的な要因の一つだ。1点目はプレーが雑、2点目は慌てていた。DFは落ち着いて、冷静に対処すべきなのに期待に応えられなかった」と伝えている。
今回、この試合を韓国のソウル広場のパブリックビューイング会場で見ていたが、周囲の韓国民の反応を見ていると確かにチャン・ヒョンスに対する風当たりは強かった。
この試合が終わり、ソン・フンミンらがミックスゾーンで生中継のインタビューに答えていたが、チャン・ヒョンスは最後まで出てこなかったのだ。その理由について「別の道からスタジアムを出た。選手を保護するため」と大韓サッカー協会関係者は説明したという。
前出の「ベストイレブン」によれば、チャン・ヒョンスはこの試合が終わって嗚咽しながら涙を流し、失点を反省していたというが、批判は止まらない。
「こうした精神状態で正常なプレーができるのかを憂慮している。“メンタルが壊れた”チャン・ヒョンスをドイツ戦という崖の底に落とすのか」と伝え、別のDFの起用を促している。
さらに韓国代表OBで、2010年南アフリカW杯にも出場したテレビ解説者のイ・ヨンピョのコメントも辛辣だった。
「あの状況でタックルに入ってはいけない。タックルをしないで防がないといけない。タックルは確実な時にすべきだ。サッカーの基本はタックルをしなくてもいい場面が多いわけで、この試合を学生たちも見ているのに、あの状況でタックルをしてはいけない」と、自身がDFとしてプレーした経験をもとに、どのように対処すべきなのかを説明していた。
中盤での連携ミスや不用意なファウルへの批判は聞こえず
たった一度のミスで、自身を取り巻く状況が大きく変わるのがW杯という舞台だ。チャン・ヒョンスのミスは、確かに批判から免れないものかもしれない。ただ、PKとなったハンドのミスは運が悪いとも判断でき、ここまで言われなければならないのかとも感じる。
韓国は中盤での連携ミスや不用意なファウルの多さも目立っていたし、決定的なチャンスをものにできなかった部分もあるが、そうした批判の声は韓国内ではほとんど聞こえてこない。
次戦の相手となるドイツは、勝利をもぎ取るために全力で来るだろう。“本気”のドイツを相手に韓国は防戦一方となる可能性が高く、再び今回のようなミスが起こるかもしれない。
もう振り返っても時間は戻らない。ドイツ戦勝利に向けて、チーム内の雰囲気を立て直す時だ。
(金 明碰 / Myung-wook Kim)