セブン&アイ、ネット通販開始の裏
セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)が10日、「ネットコンビニを開始する」と発表した。「スマホで注文、自宅で受け取り」という枠組みで、今年はまず北海道・札幌市の100店舗ではじめ来年上期には北海道全域の約1,000店舗で実施、早々に全国展を図るという。
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展開を見守りたいが、一つ疑問がある。セブン&アイのネット通販はグループを横断し「リアル店舗とネット通販の融合」を進める、いわゆる「オムニチャネル戦略」の展開の上で登場したはず。同戦略は2015年11月に導入された。絶対の権力を有していた鈴木敏文会長下でスタートした。が先に発表された18年2月期決算(純益1,811億円と4期ぶりに過去最高を更新)で、こんな事実が表面化した。減損損失の項で、オムニチャネル戦略の推進主体となってきた「omni7(オムニ7)」の建物・ソフトウェアに関し234億9,200万円の損失が計上されているのである。広報担当者の説明はこうだった。
「戦略の大転換とは認識しておりません。ネット通販は今後も多様化し継続します。経営戦略の軸足の遷移とご理解頂きたいと思います」
多様化し継続していく、のが今回の発表とすれば疑問は更に膨らむ。周知の通りセブン&アイが打ち出した「オムニチャネル戦略」は、小売業者の間で一気に関心が高まった。その牽引役となったオムニ7の減損処理である。この間、鈴木氏は16年5月に退任。鈴木氏の二男でオムニ7の責任者だった鈴木康弘取締役も、同年12月に退任している。アナリストの「鈴木親子の退任はオムニチャネル戦略失敗の引責といえる」とする指摘には軽々には頷けないが、「オムニチャネル戦略が座礁に乗り上げた」ことは否定できない。
いまの井阪隆一社長体制下では「CRM(顧客関係管理)」が戦略のキーワードとなっている。目新しい経営戦略とは言い難い。そうした状態下「オムニチャネルは出口のない迷路をさまよい始めた」「そもそもセブン&アイにはネットで稼ぐ力がなかった」等々が、早くも囁かれ始めている。