総務省サイバーセキュリティー課が出した、非常勤職員の募集要項が物議を醸している。サイバーセキュリティーに関する人材育成や研究開発、これらの施策の周知広報や付随する業務が職務で、通信技術の動向やネットワークの構築・運用などに関する専門知識と実務経験のある人を求めている。

勤務は週5日、1日5時間45分の勤務で日給8000円。時給にして1400円程度だが、通勤手当の支給がない。採用者は国家公務員法の適用を受けるため副業出来ないが、これを主な収入源に都内で暮らすのは相当困難だろう。

「専門卒の初任給よりも安く、少し高いバイト並みの金額。それでいて専門知識を求めるとは。提示する金額は、少なくとも一桁は違う」という声に代表されるように、ネットでは、求めるスキルと待遇が不釣り合いだという指摘が相次いでいる。

「なるほどこれが政府が目指す働き方改革ね」


総務省サイバーセキュリティー課(旧・情報流通新興課セキュリティ対策室)は、2016年にも、ほぼ同じ待遇で募集を出している。当時もネットでは「高度情報処理に関する人材が不足している(らしい)理由がわかる気がする」「働いたら負け案件」などと批判が噴出していた。

今回、前回募集時と待遇が変わっていないことに唖然とする人も多く、「なるほどこれが政府が目指す働き方改革ね」という皮肉も出ていた。

ただ、求人内容を読むと、応募者に求める知識や経験と業務内容に解離があるようにも見える。ネットワーク構築の実務経験や知識を持っている人を対象としながら、職務内容は「サイバーセキュリティーに関する施策(人材育成、情報共有、研究開発、制度構築等)」「周知広報業務」とあるため、

「具体的にセキュアドとかスペシャリスト的な資格保有か相当でないと応募不可みたいには書いてないし、わざわざ基本的なPC操作()ってあるのでつまりそういう事なんでせうね」

と見る人もいた。

総務省「採用者は研究開発やシステム構築をするわけではない。政策立案に関する事務」

ITジャーナリストの井上トシユキさんも「責任がなく、言われたことをやる、いわば作業要員としての採用。この勤務時間でこの日給は妥当」と、同様の分析をする。

「5〜6年前は、ITというだけでギャラが高かったが、今はそうではなくなった。スーパーのパートなどと同じように考えて良いと思う」

それでも、応募者に高度な専門知識や実務経験を求めるのは「おかしな人の応募を防ぐため、あえて条件を高めに設定している可能性がある」との見立てだった。

総務省の担当者もキャリコネニュースの取材に、「採用された人が研究開発やシステム構築を行う訳ではない」と回答している。

「研究開発法人などと連携して仕事をしております。弊部署は政策立案をするところになりますので、採用者はこれに関する事務を行います」

日給は予算の制約がある中で決められているため、「採用後に昇給することはない」と言う。前回2016年の募集時には応募があり、採用された人が同様の職務内容、待遇で働いていたそうだ。ネットで批判が上がっていることについては、「様々な意見があることは把握している。今後検討課題とする」と答えていた。