「話のさわり」「ぞっとしない」「知恵熱」ー。よく耳にするこれらの言葉、100%完璧に使いこなせているという自信のある方、どれくらいいらっしゃるでしょうか。今回の無料メルマガ『仕事美人のメール作法』では著者の神垣あゆみさんが、「国語に関する世論調査」で多くの人が間違えた問題をあげつつ、それらの正しい使い方を解説しています。

話のさわり

平成28年度「国語に関する世論調査」では、下記に挙げた3つの慣用句はどちらの意味か、尋ねています。

あなたはどちらだと思いますか?

 

1.さわり 例:話のさわりだけ聞かせる。

 ア)話などの要点のこと

 イ)話などの最初の部分のこと

 

2.ぞっとしない 例:今回の映画は、余りぞっとしないものだった。

 ア)面白くない

 イ)恐ろしくない

 

3.知恵熱 例:知恵熱が出た。

 ア)乳幼児期に突然起こることのある発熱

 イ)深く考えたり頭を使ったりした後の発熱

本来の意味は、いずれも ア)です。

「2.ぞっとしない」については、本来の意味である「ア)面白くない」と回答した人は22.8%、「イ)恐ろしくない」と回答した人は56.1%でした。

「ぞっと」は、寒さや恐怖や、強い感動を受けて、からだが震え上がる様を意味します。

例:大事故になっていたかもしれない、と思うとぞっとする。

「ぞっとしない」は、「ぞっとする」の反対語というイメージから、「恐ろしくない」という意味で捉えてしまうのかもしれません。「ぞっとしない」については、ちょうど10年前の当メールマガジンでも取り上げています。

● 誤用の実態<間違いやすい慣用句>VOL.655

存亡の機

平成28年度「国語に関する世論調査」ではまた、下記に挙げた3つの慣用句で、どちらの言い方を使うか、尋ねています。

あなたはどちらを使っていますか?

 

1.「はっきりと言わない曖昧な言い方」を

 ア)口を濁す

 イ)言葉を濁す

 

2.「卑劣なやり方で、失敗させられること」を

 ア)足下をすくわれる

 イ)足をすくわれる

 

3.「存続するか滅亡するかの重大な局面」を

 ア)存亡の機

 イ)存亡の危機

本来の言い方は

1.イ)言葉を濁す

2.イ)足をすくわれる

3.ア)存亡の機

です。

2.で「足下をすくわれる」と回答した人は64.4%で「足をすくわれる」の回答は26.3%となっています。

「すくう」とは、下から持ち上げるようにして横にはらう動き。すくうのは「足」であり、「足下(あしもと)」ではないのですが、「足下をすくわれる」や「足元をすくわれる」が使われることが多いようです。

3.で「存亡の機」と回答した人は6.6%で、「存亡の危機」の回答は83.0%となっています。私も、「存亡の危機」と思い込んでいました。

「機」は、物事をするのによいおり、機会、時機という意味なので、存続するか、滅亡するかという重大なタイミングが「存亡の機」。

一方で、「存続の危機」という言葉もあるため、これと混同して「存亡の危機」と記憶してしまうケースが多いのかもしれません。

今回の調査を行った文化庁では「言葉は時代とともに変わる。本来と異なる使い方が一般的なケースもあり、それらを全て誤用と断じることはできない」としています。

ただ、このような機会に本来の言葉の意味を知ることは大切です。変わっていく言葉を止めることはできないにせよ、何となく流されて聞いたまま、見たまま言葉を使うより、元の意味が何で、どう変わっているのかを時に立ち止って、意識してみてもよいと思うのです。

image by: Shutterstock.com

出典元:まぐまぐニュース!