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 昭和40年代のパチンコ屋は如何にも怪しい雰囲気を漂わせた魔界だった。何しろ椅子なんてものが導入されたのはもっと後のことで、客はパチンコ台に向かって立ったまま、左手の手繰りで自らパチンコ玉を送り出し、右手でレバーを操作して器用に弾き出していた。

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 パチンコ玉の送り出しとレバーでの弾き出しのタイミングがズレると、複数の球が団子状態になったり空振りしたりと、それはそれでパチンコの習熟具合が良く分かったものである。そんな状況なので、常時フル回転する両手と体を支える両足の疲労は大きく、(個人差はあるにしても)あまり長時間いるところではなかっただろう。それにしても、両手が塞がっていながらパチンコ屋の店内はタバコの煙が充満していたのだから、咥えタバコの達人が多かったのだ。

 今は座り心地の良い椅子が用意され、球は自動でトレーを流れ電動で弾き出してくれる。パチンコ中に活躍するのは右手だけで、残る左手はタバコを吸ったり缶コーヒーを持ったり自由自在である。

 7月に警察庁が発表したパチンコの出玉規制では、一般的な遊戯時間(4時間)での儲けを現行の3分の2程度となる上限5万円にするという。調子が良ければ時給換算で2万円近くだった儲けが、出玉規制で時給換算1万円超に止まるということだ。パチンコプレイヤーがどんな頻度で良い思いをしているかは知らないが、今後面白味が半減することは間違いなさそうである。

 業界には逆風が吹き続けている。1995年頃に約30兆円だったパチンコの市場規模が、2015年には約23兆円にまで20%以上の減少を見せた。店舗数は約1万8,000店から約1万店へと半減に近い減少となった。

 パチンコには出玉率が大きくなると客足が伸び、出玉率が悪くなると客足が減少するという明確な因果関係がある。数多くのドル箱を重ねている先客を見ると、根拠もないのに自分も稼げそうな錯覚をするのだろうか。多くの客が尾羽打ち枯らしていても、出ている方に自分を重ね合わせるのである。

 ローリスク・ローリターンとなれば、今まで感じた刺激を忘れられない客には“気の抜けたなんとか”になってしまう。これから始まるより厳しい出玉規制によってパチンコ屋に鳴く閑古鳥の数が増えるだろう。依存症の人はどんな状態になっても遊戯を続けると言う。依存症の人以外はあまり近寄らない“魔界”が復活するのだろうか。