長周期地震動は高層ビルを長時間、大きく揺らす

写真拡大

福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7.3の地震が2016年11月22日早朝に起きた。午前6時前だったため、自宅にいた人も多かったはずだ。

大きな揺れを観測した首都圏では、特に高層マンション住民の健康への影響が懸念される。キーワードは「長周期地震動」だ。

横浜や浦安で「階級2」を記録

長周期地震動について気象庁は、「比較的規模の大きな地震で生じる、ゆっくりとした大きな揺れ」と定義している。高層ビルを長時間、大きく揺らすため、特に高層階では室内の家具が移動・転倒するといった被害が生じる恐れがある。2011年3月11日の東日本大震災では、東京都内のあるビルを例にとると、2階の場合は書棚から本が数冊落下しただけで済んだのに、24階の部屋ではラックが完全につぶれ中の荷物が飛び出していた。これだけの衝撃なら、人体に影響が出ても不思議はない。

気象庁では長周期地震動を4つの階級に分けている。「人体の体感・行動」という項目を見ると、次のようになる。

(1)階級1:室内にいたほとんどの人が揺れを感じる。驚く人もいる。

(2)階級2:室内で大きな揺れを感じ、物につかまりたいと感じる。物につかまらないと歩くことが難しいなど、行動に支障を感じる。

(3)階級3:立っていることが困難になる。

(4)階級4:立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされる。

「階級4」は、最近では2016年4月16日の熊本地震で記録された。

今回の福島沖地震で気象庁は、宮城県、福島県など8県の12観測点で「階級2」だったとウェブサイト上で発表した。このうち首都圏では横浜市鶴見区大黒ふ頭や、千葉県浦安市、成田空港にある観測点が含まれる。「階級1」は東京23区や横浜市中区、川崎市中原区、さいたま市浦和区などだった。

記者は神奈川県にあるマンションの比較的高層階に住むが、揺れている間は「ミシッ、ミシッ」という何かがきしむ音が頻繁に聞こえ、不安になった。正確に計っていなかったが、体感として5分程度は部屋が横に揺れ続けた気がした。航行中の船の中にいる感覚に似ており、寝起きだったせいもあるのか軽いめまいと吐き気に襲われた。揺れが止まった後も気分の悪さは抜けず、しばらくは起き上がれなかったほどだ。因果関係は明確ではないものの、地震の後に体調不良になるというのは、過去に体験したことがない。

余震が止まらないと「地震酔い」も続く

ツイッターにも、今回の地震で「朝から乗り物酔い状態となって今も気持ち悪い」「ビルの高層階で揺られていたので、まだ気持ち悪い」という投稿が見られた。

すでに余震が頻発しているが、今後比較的大きな地震が続くと、マンション高層階の住民はそのたびに体調不安に襲われるかもしれない。それがエスカレートすると、実際は地震が起きていないのに常に体が揺れているように錯覚する「地震酔い」に陥る恐れがある。

東日本大震災や熊本地震でも問題視された「症状」だ。2016年4月20日付の毎日新聞電子版によると、通常は地震直後から数分、長くても2日程度で治まるが、余震が立て続けに発生する状況だと「酔った状態」がそのまま続いてしまうという。頭痛や吐き気といった症状が出て、しかも治まる気配がなければ早めに医療機関で診察を受けた方がよい。