筑波大、PK敗戦もルーキーCBコンビが完封に貢献…鈴木大誠「ワクワクした」/アミノバイタル杯

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文=平柳麻衣

 屈辱の2部降格から約半年。今年で創部120年目を迎えた名門・筑波大学が今季、大学日本一の座を手にするには、「アミノバイタル」カップ2015第4回関東大学サッカートーナメント大会で7位以内に入り、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントへの出場権を手にするしかない。

 初戦で同じ2部の東海大学を3−0で下した筑波大は、2回戦以降、1部チームとの対戦が続いたが、早稲田大学に2−1、神奈川大学に5−3と逆転勝利し、目標の全国切符を獲得。その勢いは止まることなく、準決勝では昨季全国二冠の流通経済大学を3−2で撃破した。

 7日に味の素フィールド西が丘で行われた決勝を含め、筑波大は今大会の5試合すべてに先発出場した選手が一人もいない。「勝つためのメンバーを選んだらローテーションになった。選手はそれを理解して準備をしてくれて、戦術的な柔軟性も見せてくれたので、私は『頼むぞ』と送り出すだけだった」という小井土正亮監督の采配により、チームの総合力で勝ち上がってきた。迎えた決勝では、攻撃力に定評のある明治大学と対戦。センターバックには、鈴木大誠と小笠原佳祐というルーキーコンビが起用された。
 
 決戦に臨むにあたって、鈴木は「相手の2トップは全日本大学選抜の選手なので、対戦できることが楽しみでワクワクしかしなかった」という。「元々どんな大会でもまったく緊張しないタイプだし、強い相手とやると自分の弱い部分にチャレンジできる」という強靭なメンタルは、全国大会常連の星稜高校時代に培った強みだ。

 決勝は準決勝の翌日に行われたが、「体がすごいキレてて調子が良かった」と抜群のコンディションで臨むと、局面で対人の強さを発揮。個の能力が高い明治大の和泉竜司や藤本佳希に振り切られる場面もあったが、コンビを組んだ小笠原や2年生GK森本泰介の奮闘もあり、準決勝までの4戦で10得点を挙げていた明治大の攻撃を、延長戦も含め110分間抑えきった。

 PK戦に突入すると、鈴木は4人目のキッカーに立候補。「挙手制だったんですけど、3人目あたりから誰も手を挙げなくなって、みんな蹴らないならって。そこからはもう決めるイメージと、会場が一点に注目する場面に自分が立てるっていう新たなワクワクが生まれた」と、ルーキーとは思えない度胸の強さを披露し、冷静にゴール右へ決めた。

 無失点という大きな収穫を得て、小井土監督も「1年生がよくやってくれた。後ろの選手が経験を積んでゲーム作れるようになったのは大きい」と評価したが、鈴木の自己評価はそれほど高くない。「抑えられた部分もあるが、FWは10回失敗しても1回成功したら勝ち。無失点でも自分の中で隙があったので、そこは突き詰めないといけない」。小笠原との連携についても、「改善の余地しかない。前半の相手の決定機の場面、ピッチの中で小笠原くんとケンカしてたんです」と反省した。

 まだ大学入学からわずか3カ月のルーキーで、連携面も技術面も改善点が多いのは当然のことだ。「2年後、3年後には、声を掛けなくても分かり合えるような信頼関係を小笠原くんと築いていたい。それから大学選抜でもコンビを組んで、筑波の鉄壁と言われるようになりたい」。そんな鈴木の言葉に、今後の成長への期待が膨らむ。

 結局、筑波大は好ゲームを演じながら最後はPK戦に3−5で敗戦。関東第2代表としての出場が決まった8月の総理大臣杯に向け、鈴木は「次は優勝します。絶対勝ちます」と力強く、リベンジを誓った。