黒島伝治(1898-1943)という小説家がいる。大正末から昭和初期にかけて活動した人だ。今回出た作品集『瀬戸内海のスケッチ』や、「浮動する地価」にはこういう一節がある。〈いつの間にか、十六燭は、十燭以下にしか光らなくなっていた。電燈会社が一割の配当をつゞけるため、燃料で誤魔化しをやっているのだった。芝居小屋へ活動写真がかゝると、その電燈は息をした。ふいに、強力な電燈を芝居小屋へ奪われて、家々の電燈