韓国で活躍したセドンとバンデンハークの比較

期待度大のバンデンハーク、課題はチーム内の競争を勝ち抜けるか

 ここ数年大物選手の来日が続いたこともあって、今年NPBにやってきた新外国人選手には小粒な印象を受ける。しかし、ビッグネームは少ないが個性派ぞろいではある。彼らの活躍を記録に着目して検討してみた。

○リック・バンデンハーク投手(ソフトバンク)

 2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではオランダ代表として出場し、昨年(2014年)は韓国リーグの最優秀防御率投手となった。昨年巨人でプレーしたクリス・セドン投手は、同じ韓国で一昨年(2013年)に最多勝投手となっている。近い時期に、近い環境で好成績を残したバンデンハーク投手とセドン投手の成績を比較する。

 防御率や投球回、勝利数はセドン投手の方が優れているが、細かい投球内容ではバンデンハーク投手が上回っている。昨年のセドン投手のNPBでの成績は、三振を奪う頻度(9回当たり6.4個)、四球を与える頻度(9回当たり3.5個)は両方とも平均レベルを割っており、その影響もあって登板機会は増えず、成績を伸ばせなかった。

 バンデンハーク投手は、奪三振や与四球で明らかにセドン投手を上回っている。特に三振については、米マイナー3A級通算で9回当たり7.4個(485.2回)、米メジャー通算で8.8個(183.2回)と、レベルや国を問わず安定した割合で奪えており、日本でも三振を奪っていく投球を見せる可能性は高そうだ。不安な点を挙げるなら、厚いソフトバンクの先発ローテーションの枠に入り込めるかだろう。ケガの影響で出遅れた右腕は、開幕は二軍スタートとなった。

左サイドスローのガラテ投手は三振の山を築くか?

 また、今年は昨年台湾球界でプレーした投手が4人も入団した。台湾のアマチュアからのNPB入りも1人いる。

○ミゲル・メヒア投手(西武)

 昨年、台湾球界新記録の35セーブを挙げた。台湾球界のセーブ王が日本にやって来たのは1997年のロバート・ウィッシュネフスキー投手(西武)、2004年のラモン・モレル投手(阪神)に続いて3人目となる。だがミゲル・メヒア投手は、この3人の中では最も三振を奪う頻度が低かった。四球も特に少ないわけではない。一昨年は先発投手を務めていたが、内容は昨年とあまり変わらない。なお、日本ハムの入団テストを受けているが不合格となっている。

 それでもセーブ王になれるだけの投球を見せられたのは、ゴロを打たせアウトにつなげられていたところが大きそうだ。三振、四球を妥当な域に収め打球管理で勝負したいところだが、オープン戦3試合3.1回で与四球6と制球に苦労している模様。現状ではリリーフ陣に割って入るのは難しいか。開幕は二軍スタート。

○エスメリン・バスケス投手(西武)【開幕一軍】

 ミゲル・メヒア投手と同じゴロを打たせる傾向のある投手だが、同投手よりもさらに三振が奪えず、四球を与える割合も高い。メジャー経験は豊富で、通算147試合に登板し9回当たり7.2個の三振を奪っている。これは台湾時代よりもよい数字だが、現状は打球管理で勝負する部類に入る投手だろう。ただ、西武の内野守備はあまり芳しいものではなく、彼らの特長が発揮できるかはわからない。オープン戦では7試合6.1回に登板し自責点1と折り合いはつけ、開幕一軍入りを果たした。開幕3戦目の7回に登場しライナー2本と外野フライ1。

○アマウリ・リーバス投手(中日)

 2011、2012年に3A級でのプレー経験があるが特筆すべき数字はない。昨年の台湾では9回当たり7.7個の三振を奪い、四球も少なかった。三振と四球のバランスを見るK/BBは 4.33とよい数字だったが、登板が30イニングと少なかったため参考にしにくい。オープン戦では2試合4.1回で被本塁打4、与四球4と苦しんだ。開幕は二軍でスタート。

大器の片鱗を感じさせる西武の郭俊麟

○ヴィクター・ガラテ投手(日本ハム)【開幕一軍】

 三振奪取能力が高く、昨年の台湾の奪三振ランキング上位15人の中で、奪三振が投球回数を上回った2投手のうちの1人。2013年と昨年はメキシカン・リーグでも投球回数を上回る奪三振を記録している。左のサイドスローで例年は左打者に対し威力を発揮してきたが、昨年は左打者に被打率.296と打たれていた。オープン戦では全てリリーフだが7回を被安打3、8奪三振と好調。開幕一軍入りを果たした。浦野博司のケガの影響で開幕3戦目に先発マウンドへ。5回無失点も18人の打者から奪った三振は2つのみ。

○郭俊麟投手(西武)【開幕一軍】

 台湾のアマチュアからのNPB入りした投手。アマチュア時代の実績としては、一昨年チャイニーズ・タイペイの一員として侍ジャパンとの親善試合に先発。6回を投げ被安打5、梶谷隆幸や中田翔、丸佳浩から奪ったものも含め6奪三振、1失点と好投した。また、昨年の仁川アジア大会では決勝でプロ選手をそろえた韓国との試合に先発。2008年の北京五輪で日本を苦しめたキム・グァンヒョン(SKワイバーンズ)と投げ合った。今年からMLBでプレーするカン・ジョンホ(ピッツバーグ・パイレーツ)からも三振を奪う投球で4.2回を投げ4奪三振1失点で切り抜けた。

 同年11月の第1回 U-21W杯では日本との決勝戦で7回を投げ被安打4、6奪三振無失点で勝利投手となり大会MVPにも選ばれた。もちろんトーナメントのような短期決戦での投球内容で選手の特徴は計れないが、国際経験は豊富で大器の片鱗を感じさせるものがある。アマチュアから西武入りした「郭」ということで共通点の多く、思い出す人もいるであろう郭泰源氏(前ソフトバンク一軍投手コーチ)のような活躍を見せるかもしれない。29日に出場選手登録され、その日のオリックス戦に初先発。5回を投げ勝ち投手になったが、26人の打者と対戦し奪三振4、四死球5。17本の打球のうち、11本が外野へのフライかライナーと打球管理に苦しんだ。

DELTA・水島仁●文 text by DELTA MIZUSHIMA,J

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1〜3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。http://www.deltacreative.jp