たった4%でも画期的!リサイクル材を使用した「乾電池」が未来への第一歩

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乾電池というのは、廃棄に気を使うアイテムのように思える。一般ゴミとは区別して、使用済乾電池を回収している自治体も多いだろう。

いっぽうでその性質上、これまでリサイクル材から作られた乾電池というものはなかったようだ。“世界初の乾電池リサイクル材を部分的に使用したアルカリ乾電池”を実現したと、アメリカの大手乾電池メーカー、Energyzer(エネジャイザー)が発表している。

電池をリサイクルできる画期的な技術を開発

この乾電池『Energizer EcoAdvanced』でリサイクル材が使われているのは、単4乾電池の重量に対してたった4%(ただし重要な成分においては10%に達する)、単3乾電池の場合は3.8%だ。

それでも新規に使用する天然資源の量を減らせること、廃棄する資源を減らせることが環境負荷の低減になることをメーカーは強くアピールしている。

このリサイクルを実現するために、使用済み電池の成分を精製し、あらたな新品電池の材料に変えるための画期的な技術を開発したという。同社では2025年までにバッテリー原料のリサイクル率を、現在の10倍の40%にまで高めたいとしている。

ところで、これまで乾電池がまったくリサイクルされていないわけではなかった。廃乾電池のリサイクルを行う野村興産のウェブサイトを見ると、亜鉛地金や肥料の原料、鉄筋などの鉄製品にリサイクルされているようだ。

リサイクルによって環境負荷が増えることもある

しかし、一般社団法人電池工業会のウェブサイトを見ると、“リサイクル”というプロセスの難しさがわかる。

「乾電池は、水銀を使用していない場合、現在の技術においては全てを回収・リサイクルすることは適切ではないと考えています」という記述が見られる。

なぜか? その理由も書かれている「家庭用乾電池の回収は、リサイクルによって得られる環境保護上の利点よりもリサイクルによって発生する環境に対する有害な影響の方が大きい場合がある』というのだ。

これは日本だけでなく、日欧米三極電池専門家会議の公式見解だ。なお、日本においては1990年代初頭に、乾電池に水銀は使用されなくなり、廃棄による環境負荷は小さくなっている。

こういったリサイクル事情にもかかわらず、エネジャイザーが乾電池リサイクル材を使った乾電池の製造を始めたということは、メリットがデメリットを上回ったからだろう。

乾電池に限らず、リサイクルすることで、むしろ環境負荷が増えてしまうものは多いのではないだろうか。そのハードルを乗り越えるためには、単なるリサイクルではなく、“環境負荷の小さいリサイクル技術”のためのイノベーションが必要だ。

その点で、たった4%とはいえ、乾電池リサイクル材を使った乾電池の製造技術というのは、未来への大きな一歩なのだろう。

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【参考・画像】

※ Energyzer

※ 一般社団法人 電池工業会

※ 野村興産