【株式相場】米国の利上げ、TPP、FCV発売…2015年の注目イベント
12月17日の配信では、2015年前半の注目イベントを紹介した。
1月から6月までのニュースやイベントを取り上げたが、2015年はそれ以外にも、現時点では時期が未定だが注目すべきイベントがある。今回は、そうした時期未定のイベントに注目してみたい。
2015年に控える最大の注目イベントと言えば、FRB(連邦制度準備理事会=米国の中央銀行)による利上げだろう。2012年から2年弱続いた量的金融緩和の第3段、いわゆる?QE3?は2014年10月に終了した。この間、ニューヨーク・ダウ指数は1万3000ドルから1万8000ドルまで約4割上昇、失業率も8.1%から5.8%まで改善。住宅着工件数も大きく伸びるなど、QE3は結果的に成功したと言える(米国経済がリーマンショックによってどん底に落ちた後だったため、上がるしかなかったということはあるが)。いま現在は、米国の金融政策が金融緩和から金融引き締めに向かうという大きな転換期にあることは間違いない。問題はその時期だ。
2014年の中頃までは、FRBによる利上げが2015年の夏頃という見方が市場でも強かったように思える。しかし、2014年の半ば以降、雇用統計などの景気指標の改善ペースが予想より早いことを受けて、2015年3月頃の利上げを予想する声も出始めるようになった。
ところが、イエレンFRB議長は12月のFOMC(連邦公開市場委員会、米国の金融政策を決める委員会)後の記者会見で、「少なくとも3月までの利上げは考えられない」と発言。また、3月のFOMCのメンバー交代によって、利上げに対して慎重な?ハト派?がさらに増えるとされる。12月半ばに取材した市場関係者は、利上げの時期に関して「夏ごろが有力であることは確かだが、もしかしたら2015年中はないかもしれない」と話す。
一大調整局面を知るポイントはたった2つなぜ、利上げがここまで重要なのか。それは、過去を見ても、利上げが株価の大幅な下落につながることが明白だからである。それまで市場にばらまいてきたお金を今度は回収するわけだから、当然と言えば当然だろう。1987年以降、過去5回の金融緩和→金融引き締めの局面では、2004年6月を除いて利上げの前後1年半で米国市場の株価が天井を打ち、その後大幅な調整局面を迎えている。ちなみに、2004年のケースでは、利上げ後も住宅市場を中心に投機マネーによるバブルが膨らみ続けたことで、金融市場の歴史的な大クラッシュを招いた。そう、いわゆるサブプライムショック、リーマンショックである。
過去5回の利上げ局面のうち、唯一、ソフトランディングと言っていい1994年のケースでも、全体相場は1割程度下落。その他はいずれも2割以上下がっている。また、1999年以降の2回では5割以上の下落につながっている。
ポイントは、
(1)いつ利上げに踏み切るのか
(2)利上げが決まった時点で株価の調整が始まるのか
この2点。もし、利上げが決まっても株価の上昇が続いた場合、その後には一大調整局面が控えていると考えるべきだろう。ニューヨーク・ダウは、12月5日から大きく下落していたが、FOMC後に「利上げはまだ先」であることが確認されると急反発。1万8000ドルを突破し、市場最高値の更新を続けている。もし、1万8000ドル近辺で利上げが決まったとすれば、最低でも1割、1万6000ドル程度までの下落は覚悟する必要がある。2割なら1万4400ドルだ。
そうなれば、いくら円安に下支えされるとはいえ、日本株も調整局面に入るのは免れない。特に、日経平均に採用されている大型株は調整の度合いが大きくなりそうだ。2015年は、利上げのタイミングに常にアンテナを張りながら投資をしていく必要がある。
「じゃあ、利上げは結局いつなんだよ」と思われるだろうが、取材した識者の間でも意見が割れているのが現実だ。夏頃が最有力ではあるものの、不透明としか言いようがないのが実情である。ここからは毎月発表の米雇用統計や、ハト派が増える3月のFOMC後の要人発言などに注目していくしかないだろう。
まだまだある2015年の注目イベント2015年には、他にも時期が未定の注目イベントがいくつかある。
まず、米国の利上げに次ぐ重要イベントと言えるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の妥結。安倍首相が2013年3月にTPPへの参加交渉を表明してから、すでに1年9カ月が過ぎようとしている。なかなか大筋合意にさえ至れないでいるが、日本では解散総選挙、米国では中間選挙が終了しており、両国とも妥協しやすくなった点が大きい。
TPPでは、農産物の関税ばかりに焦点が当たっている。実は金融や保険、医療などへの影響も大きいと思われる。中には、「TPPがさらなる円安加速の要因になる」との見方もあり、見逃せないイベントだ。TPP妥結の直後から経済の構造が大きく変わるわけではないものの、メリットを受ける業種、反対にデメリットを受ける業種がじわりと明らかになってくるだろう。
次に、2015年にはホンダのFCV(燃料電池車)「FCV CONCEPT」の発売にも注目したい。トヨタ自動車はすでに燃料電池車「MIRAI」を発売済みだが、ホンダはハイブリッド車でトヨタの後塵を拝しているだけに、FCVで巻き返しを図ってくるはずだ。現に、2015年度ではトヨタの700台に比べて、ホンダは1500台と2倍以上の販売計画を立てている。ほかに、水素ステーションの整備や水素燃料に関する新技術など、水素エネルギー絡みのニュースが立て続けに出てきそうだ。そういう意味で、2015年は“水素エネルギー元年”となるかもしれない。
エネルギーといえば、政府は地熱、風力など太陽光発電にとって代わる新たな再生可能エネルギーの普及に尽力する構えを見せている。1月の通常国会では、地熱や風力エネルギー促進の具体策が浮上するはず。ただし、こちらは直近の原油価格の急落でややトーンダウンする公算もある。とはいえ、再生可能エネルギーの促進は、大半の原子力発電所の再稼働に踏み切れない日本にとって急務なのは確かである。代替エネルギーの最右翼候補である地熱関連株は、具体策浮上で買われる局面があるだろう。
そのほか、2015年には
プーチン露大統領訪日戦後70年介護ロボットの公的保険適用対象を拡大Windows10の一般発売開始品川〜羽田、渋谷、銀座など都市部各所で大規模再開発継続リニア中央新幹線工事の本格的な発注開始三菱の国産旅客機「MRJ」が初飛行新世紀エヴァンゲリオン劇場版・完結編が公開など、数々の注目ニュースやイベントが予定されているのだ。
新井奈央(あらいなお)マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株-1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。