by Luigi Crespo

オンライン通販サイトのAmazonは「ファッション、家電から食品まで」を標榜するとおり5000万点以上の商品を扱っていて、書籍・電子書籍に関してもダントツ。それゆえに、Amazonと出版社との間ではいくつもの争いが繰り広げられていますが、アメリカの大手出版社・アシェットとの争いにおいては、900人を超える作家たちがAmazonの戦術に反対する手紙に署名する事態になっています。

Writers unite in campaign against 'thuggish' Amazon | Technology | The Guardian

http://www.theguardian.com/technology/2014/jul/25/writers-campaign-amazon-ebook-dispute-us-hachette



Amazonがアメリカで市場シェア第4位の出版社・アシェットの夏・秋の新刊に対する予約注文ができないような措置を執ったのは5月22日のこと。Amazonのアシェットに対する攻勢はこれだけではなく、取り扱っているアシェットの書籍の割引を減らしたりなくしたり、さらに配送も遅らせるなどの手を使っています。

こういった方法に対して「凶悪犯の振る舞いだ」と声を上げたのが、スリラー作家ダグラス・プレストン氏。長らくAmazonとはいい関係にあったのに、裏切られた気分だと不愉快さを表明しています。プレストン氏による、Amazonの戦術への反対を表明する手紙には多くの作家が賛同し、スティーヴン・キングドナ・タートポール・オースター、ジェームズ・パターソン、ジョン・グリシャムといった作家らが名を連ねています。

プレストン氏によると、Amazonという会社が本を売るということ自体は有益なことで、よい結果も出ているのですが、書籍・電子書籍のシェアを巡って、本の著者には無関係な争いが起き、その結果として著者が傷つくようなことには反対する、という表明だとのこと。

実際、本の著者の視点だと、Amazonで書籍が取り扱われることで読者はカンタンに本を入手することができ、巡り巡って著者の利益にも繋がります。そのため、作家らとAmazonとは世界的なサービスになる前からいい関係を築いていたのですが、ここ数年のAmazonの態度は本の著者のことを考えているようには見えないものだったそうで、「雑兵」として扱われているようだったとプレストン氏は語っています。

書籍ビジネス関連のニュースサイト・the Booksellerのフィリップ・ジョーンズ氏によると、流通において強い力を持つAmazonの影響力は大きく、例えば電子書籍の市場だと、Amazonで商品の取り扱いがなくプロモーションができないということは死んでいるのも同然。この種の論争も珍しいことではないのですが、今回のように作家たちが反対の声を上げたというのが従来のケースとは違うところで、「作家に対して冷たい」という見方が広まることはAmazonにとっても得策ではないのではないか、と懸念を見せています。

ちなみに、Amazonとアシェットとの争いは契約条件面によるものと見られており、外から具体的な数字を知ることはできないものの、売上のうちAmazonの取り分を30%から50%に引き上げるものだと考えられています。Amazonからすれば作家たちがアシェットの「人間の盾」となっている状態なので、そこを攻略すべく「アシェットが同意するならば、この争いが決着するまでは、Amazon上で売れたアシェットの電子書籍の売り上げは100%著者に渡すことにしたい」と申し出ましたが、アシェットはこれを受け入れなかったとのこと。

Amazon絡みでは、再販制度のある日本でAmazonが勝手に値引き販売をしているとして出版社51社が自社商品の除外を求める要望書を提出。実際に緑風出版、晩成書房、水声社などがAmazonへの出版物出荷を一時停止するなどの動きがあります。