東亜学園vs早稲田実業 東亜学園、攻守に納得出来る会心の勝利
朝方に江戸川方面にはかなりの雨が降ったということもあって、試合開始は予定より30分ほど遅れて、シートノックはなくサイドノックのみで試合開始となった。
東亜学園・小林君
早稲田実業は初回、先頭の山岡 仁実君が右中間二塁打すると、バントで進めて、四球などを挟んで5番西岡 寿祥君の右前へ落とすタイムリー安打でいい形で先制した。その裏、川上君はあっさりと東亜学園を三者凡退で抑え、試合は早稲田実業ペースで進み始めた。
とは言え、東亜学園の小林君も初回の失点をそれほど引きずるという印象はなく、すっと切り替えられていたようだ。上田滋監督も、「今日は投手には4点までは大丈夫だということは言ってありましたから、4点以上取ろうということでやっていました」というつもりだった。その4点を、東亜学園は4回に一挙に奪った。
この回の東亜学園は、先頭の2番山本君が右前打すると、野瀬君はバントするぞと見せかけながら、四球を選んで一、二塁。4番小澤君は散々ファウルで粘った末に右前打して無死満塁。続く木下君は初球を叩いて、やや湿り気味のグラウンドながら、大きく跳ねて三塁手の頭上を越えていき2点タイムリーとなった。さらに、バントで送って一死二三塁とすると、白井君の中犠飛に8番沼田君の中前打で4点目が入った。
このリードで小林君も気楽に投げられた。昨秋から比べて、緩くて曲がりの大きなカーブを使えるようになったのが大きな成長だというがストレートとカーブ、スライダーをほとんど同じ腕の振りで投げられるのも、相手打者にとっては打ち難いタイプともいえる。 初回こそ鮮やかに先制した早稲田実業だったが、以降はそんな小林君の術中にはまる形になった。7回に二死から四球とリリーフして9番に入っていた松本 皓君の二塁打で1点を追い上げたがそこまでだった。
逆に東亜学園は8回、4番小澤君が左翼へソロホーマーし、さらには、どちらかというと守備要員として先発起用していたという沼田君が、この日2打点目となるタイムリー安打も放って突き放した。
早稲田実・山岡君
ほぼイメージ通りで会心の勝利といってもいい試合運びで、上田監督もさすがに上機嫌だった。
「初回の1点は仕方ないですね。相手の1番はいい打者ですしから…。このチームは、去年の秋はブロック予選の初戦で敗退していますから、この春もブロックを勝ち上がってきて、公式戦を重ねていかないといけないんですよ。 ウチみたいな二部のチームはシードの一部のチームに胸を借りるつもりで経験を積んでいかなきゃいけませんからね。そんな素質のいい選手がいるわけじゃないんだし、それでも、今日は守りがいいからと思って使っていた選手が打つという、おまけの点まで入って、いい流れでした」
上田監督は、母校東洋大が東都リーグの二部に低迷していることにもたとえながら、今大会はブロック予選から積み上げてきた東亜学園もアップセットしていこうという意識である。また、そんな勢いは十分に感じられる試合ぶりだった。
ところで、上田監督がいい打者と評価した早稲田実業の1番山岡 仁実君は、実はその父親は和泉実監督と早稲田実業の同期で、和泉監督が捕手としてバッテリーを組んでいた間柄でもある。そういう意味では、和泉監督にとっては思い入れもある選手なのだろう。この日も2安打してその期待に応えたのだが、チームとしてはケガ人も多く、模索中ということもあるようだが、攻撃そのものも淡泊だった。
(文=手束 仁)