好守に笑顔でベンチへ戻る鹿児島玉龍

接戦に自信あり! 3戦連続延長制す・鹿児島玉龍

 鹿児島玉龍の粘り強さは驚異的だ。4回戦から3戦連続で逆転勝ちの延長戦を制し、14年ぶりとなる九州大会を勝ち取った。

 5回にミスが絡んで先制されたが、直後の6回、4番・遠藤 伊知郎(2年)のライトオーバー二塁打ですぐに同点に追いついた。過去2打席、縦の変化球を打ちあぐね2三振だったが「中盤になってボールも浮いてきたので、打てると思った」(遠藤)。 ボックスの捕手寄りに立って、ボールをしっかり見極め、内角高めの直球を逃さず仕留めた。「4番が打ったことで、終盤相手にプレッシャーをかけることができた」と水口 義昭監督は主砲の一振りを勝因の一つに挙げる。

「粘るんだぞ!」。 中盤以降、水口監督は何度もベンチからナインに檄を飛ばしていた。8回裏は一死二三塁、9回は一死一三塁、一打勝ち越し、サヨナラの絶体絶命のピンチがたびたび訪れたが「不思議と勝てるイメージしかわかなかった」と水口監督は言う。昨夏、秋と1点差の接戦で敗れた悔しさをバネに冬季を過ごし、今大会の鹿児島商戦、れいめい戦と苦しい試合をものにしたことで「この展開は自分たちの勝ちパターン」(大迫 泰希主将)と信じることができた。

 延長に入ると「声で相手をのみ込もう」(大迫主将)とベンチが一丸となって盛り上げた。これまで精緻な制球力で鹿児島玉龍打線を苦しめてきた相手先発が2つの四球を出し、エラーで勝ち越し点が入ったのは、ベンチが一体となって作り上げた「見えない力」のなせる業だったのかもしれない。

 甲子園7回、九州23回の出場回数を誇る古豪も、甲子園は71年夏、九州大会は00年秋以来、遠ざかっていた。ようやく14年ぶりに九州大会の切符を手にして「過去の先輩に恩返し、後輩に道を開くきっかけが作れた」と水口監督。OB監督として5年目の春でつかんだ九州大会は「古豪復活」の狼煙にするつもりだ。

(文=政 純一郎)