時計バカと漫画家が強力タッグ『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』
1000万円する腕時計をしているという人に会ったことがある。
でも、その腕時計がどんなものだったのか、未だによくわからない。
ジャケットの袖に隠れて、ほとんど見えなかったのだ。
「やだ、それって△◎☆▽×○□じゃないですか!!!」
と、すかさず盛り上がったお姉さんがいなければ、まるで気づかなかった。
凄まじい奥ゆかしさに震えた。なんでしょう、そのさりげないおしゃれっぷり。
見せないなら1万円の時計でもいいような……と思ったのは内緒だ。
『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』(マキヒロチ著・日本版クロノス編集部)を本屋で見かけて真っ先に思い出したのは、その1000万円の腕時計の人だった。
言うまでもないことだが、腕時計に100万円以上かけるのは、けっこうな勇気がいる。
でも、腕時計にお金をかけているのは金持ちとは限らない。
「夫が高級時計を買いたがっています」(大手小町)
のように年収はともかく、欲しいんだもん! という人もいる。
何がそんなにも心を惹きつけるのか。
高級時計にハマると、どんなめくるめく世界が待っているのか。
よく言われる「時計を見れば、その人がわかる」は果たして本当なのか。
本書は「今まで時計に興味を持ったことが一度もない」というマンガ家・マキヒロチが、時計ジャーナリスト・広田雅将や編集者と共に、時計工房やイベント、専門店などを取材するレポートエッセイ漫画。高級時計専門誌「Chronos (クロノス) 日本版」の人気連載を一冊にまとめたものだ。
岩手県雫石町にあるセイコーの工房見学から始まり、ドイツの高級時計ブランド「ランゲ」のオーバーホール、ヴァンクリーフ&アーペルの文字盤を手がけるエナメル職人のデモンストレーション、スウォッチグループのカスタマーセンターなどに足を運ぶ。タグホイヤー・アカデミーの取材では、実際のサーキットを200キロで走行し、クロノグラフでタイムや速度を測る。
クロノグラフは、ストップウォッチがついている時計。メカニカルなデザインで、男性に人気がある。ただし、ここまで一般的になったのは1980年代以降だという。
“かつてクロノグラフというのは、専門職であることを示す、一種の記号だったのである。”
1kmを通過する秒数から平均速度を測るタキメーターはレーサー向き。光りと音のズレを測り、光りが発生した場所までの距離がわかるテレメーターは昔の軍人用。脈拍が測れるパルスメーターは医者向けといった具合だ。
広田はどこまでも熱く、マニアック。腕時計のネジを作る機械に興奮し、頬を赤らめ、尻を振る。そして、膨大な知識をもとに、みっちりこってり高級腕時計のなんたるかを解説する。
“エラい人が着けてるのは薄型2針なんです!”
“時計を選ぶ時のコツはバンバン着けさせてもらうことなんです”
“マナーを守っていれば数千万円の時計も見せてくれるし 目も肥えますよ!”
“これだけの歯車が入ってるってことは大変なことなんですよ!”
“女と同じで盛れば盛るほど輝くんです!!”
一方、マキヒロチはそんな広田に驚いたり、呆れたり、尊敬したりしながら、「わからん!」をためらわずにぶつける。おかげで腕時計初心者も、置いてけぼりにされる心配無用。絶妙な間合いで、高級腕時計の世界をのぞかせてくれる。
*『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』(マキヒロチ著・日本版クロノス編集部)
*「Chronos (クロノス) 日本版」
*『いつかティファニーで朝食を』(マキヒロチ著・新潮社)
(島影真奈美)
でも、その腕時計がどんなものだったのか、未だによくわからない。
ジャケットの袖に隠れて、ほとんど見えなかったのだ。
「やだ、それって△◎☆▽×○□じゃないですか!!!」
と、すかさず盛り上がったお姉さんがいなければ、まるで気づかなかった。
凄まじい奥ゆかしさに震えた。なんでしょう、そのさりげないおしゃれっぷり。
見せないなら1万円の時計でもいいような……と思ったのは内緒だ。
言うまでもないことだが、腕時計に100万円以上かけるのは、けっこうな勇気がいる。
でも、腕時計にお金をかけているのは金持ちとは限らない。
「夫が高級時計を買いたがっています」(大手小町)
のように年収はともかく、欲しいんだもん! という人もいる。
何がそんなにも心を惹きつけるのか。
高級時計にハマると、どんなめくるめく世界が待っているのか。
よく言われる「時計を見れば、その人がわかる」は果たして本当なのか。
本書は「今まで時計に興味を持ったことが一度もない」というマンガ家・マキヒロチが、時計ジャーナリスト・広田雅将や編集者と共に、時計工房やイベント、専門店などを取材するレポートエッセイ漫画。高級時計専門誌「Chronos (クロノス) 日本版」の人気連載を一冊にまとめたものだ。
岩手県雫石町にあるセイコーの工房見学から始まり、ドイツの高級時計ブランド「ランゲ」のオーバーホール、ヴァンクリーフ&アーペルの文字盤を手がけるエナメル職人のデモンストレーション、スウォッチグループのカスタマーセンターなどに足を運ぶ。タグホイヤー・アカデミーの取材では、実際のサーキットを200キロで走行し、クロノグラフでタイムや速度を測る。
クロノグラフは、ストップウォッチがついている時計。メカニカルなデザインで、男性に人気がある。ただし、ここまで一般的になったのは1980年代以降だという。
“かつてクロノグラフというのは、専門職であることを示す、一種の記号だったのである。”
1kmを通過する秒数から平均速度を測るタキメーターはレーサー向き。光りと音のズレを測り、光りが発生した場所までの距離がわかるテレメーターは昔の軍人用。脈拍が測れるパルスメーターは医者向けといった具合だ。
広田はどこまでも熱く、マニアック。腕時計のネジを作る機械に興奮し、頬を赤らめ、尻を振る。そして、膨大な知識をもとに、みっちりこってり高級腕時計のなんたるかを解説する。
“エラい人が着けてるのは薄型2針なんです!”
“時計を選ぶ時のコツはバンバン着けさせてもらうことなんです”
“マナーを守っていれば数千万円の時計も見せてくれるし 目も肥えますよ!”
“これだけの歯車が入ってるってことは大変なことなんですよ!”
“女と同じで盛れば盛るほど輝くんです!!”
一方、マキヒロチはそんな広田に驚いたり、呆れたり、尊敬したりしながら、「わからん!」をためらわずにぶつける。おかげで腕時計初心者も、置いてけぼりにされる心配無用。絶妙な間合いで、高級腕時計の世界をのぞかせてくれる。
*『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』(マキヒロチ著・日本版クロノス編集部)
*「Chronos (クロノス) 日本版」
*『いつかティファニーで朝食を』(マキヒロチ著・新潮社)
(島影真奈美)