ゲーマーは経営者を目指すべき。ドワンゴ川上会長『ルールを変える思考法』
自分が学生だった1990年代はじめは「ストリートファイターII」を筆頭に、ゲームセンターの黄金時代でした。その後ゲームメディアで働くようになって、業界内で知人が増えるうちに、意外な事実を知るようになります。全国大会の猛者クラスが、けっこう良い大学や有名企業に入ったり、ゲーム会社に就職したりしているんですよ。秘訣を聞いたところ、こんな答えが返ってきました。
「受験や就活もゲームに見立てて『攻略』した」
うわー、自分もこんな風に言ってみたかったですね! こんなエピソードを思い出したのも、本書「ルールを変える思考法」(中経出版)を読んだから。ニコニコ動画でおなじみのドワンゴ会長、川上量生による初の著作です。ゲームニュースサイト「4Gamer.net」の「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」という連載をベースに大幅な加筆や再構成がなされています。
かつて「戦国大名」(エポック社)などのアナログゲームにハマり、思考力の原点を養ったという川上。起業後もブラウザゲームの「ブラウザ三国志」に会社ぐるみでのめりこんだという逸話の持ち主です。もっともテレビゲームだけを遊び続けても、次の3つの理由から現実世界での成功には繋がらないのだとか。曰く・・・
1人間が、コンピュータの決めたルールに従ってゲームをプレイする
2反射的な思考能力の速さを競うゲームがほとんどである
3コンピューター相手にゲームをやっても人間との付き合い方は学べない
その上で「ビジネスは世の中でいちばん『リアル』なゲームの一つ」だが、「現実社会は複数のゲームが絡み合いながら進む」ので、成功の難度は桁違いに高い。そこで負けないために求められるのが「まずルールを確認・検証し、そこから最適解を探す」ことだといいます。でも、テレビゲームではその訓練が難しい、というわけなんです。
この「ルールの裏を読み、盲点を突く」「勝てないゲームなら、勝てるように、ルールを変えてしまう」感覚、何かに似ていませんか? ざわっ…ざわっ…ざわっ…。そう、ギャンブル漫画の名作「カイジ」シリーズです。
実際「カイジ」まで極端ではありませんが、ゲームクリエイターには、こうした能力に長けている人が多いのも事実です。
ここでのルールはゲーム機やビジネスモデルで、技術の進化に伴ってどんどん上書きされていきます。その変化をいち早く読み解き、いかに最適なゲームソフトを作り出すか。「スーパーマリオ」も「ドラゴンクエスト」も、最近では「釣り☆スタ」も「怪盗ロワイヤル」も、みんなこうして誕生し、大ヒットしてきたんです。一流のゲームクリエイターといえども、経営者として成功するわけではありませんが、そのための資質は大いにあると思います。
これ以外にも本書には「ニコニコ動画」の制作秘話や、ドワンゴ創業時の知られざるエピソードなどが満載です。同社のサービスが好きな人なら、興味深く読み進められるでしょう。
「ルールを変えよう」「競合だらけのレッドオーシャンから、ブルーオーシャンに逃げだそう」・・・いろんなビジネス書で、異口同音にこんな説明が並びます。でも具体例に乏しかったり、文章が難解だったりで、手が伸びにくい書籍が多いのも事実。そんな中で本書は希有な存在ではないでしょうか。ビジネス書として万人にお勧めですが、特に就活を目前に控えた大学生に読んでもらいたいところです。
(小野憲史)
「受験や就活もゲームに見立てて『攻略』した」
かつて「戦国大名」(エポック社)などのアナログゲームにハマり、思考力の原点を養ったという川上。起業後もブラウザゲームの「ブラウザ三国志」に会社ぐるみでのめりこんだという逸話の持ち主です。もっともテレビゲームだけを遊び続けても、次の3つの理由から現実世界での成功には繋がらないのだとか。曰く・・・
1人間が、コンピュータの決めたルールに従ってゲームをプレイする
2反射的な思考能力の速さを競うゲームがほとんどである
3コンピューター相手にゲームをやっても人間との付き合い方は学べない
その上で「ビジネスは世の中でいちばん『リアル』なゲームの一つ」だが、「現実社会は複数のゲームが絡み合いながら進む」ので、成功の難度は桁違いに高い。そこで負けないために求められるのが「まずルールを確認・検証し、そこから最適解を探す」ことだといいます。でも、テレビゲームではその訓練が難しい、というわけなんです。
この「ルールの裏を読み、盲点を突く」「勝てないゲームなら、勝てるように、ルールを変えてしまう」感覚、何かに似ていませんか? ざわっ…ざわっ…ざわっ…。そう、ギャンブル漫画の名作「カイジ」シリーズです。
実際「カイジ」まで極端ではありませんが、ゲームクリエイターには、こうした能力に長けている人が多いのも事実です。
ここでのルールはゲーム機やビジネスモデルで、技術の進化に伴ってどんどん上書きされていきます。その変化をいち早く読み解き、いかに最適なゲームソフトを作り出すか。「スーパーマリオ」も「ドラゴンクエスト」も、最近では「釣り☆スタ」も「怪盗ロワイヤル」も、みんなこうして誕生し、大ヒットしてきたんです。一流のゲームクリエイターといえども、経営者として成功するわけではありませんが、そのための資質は大いにあると思います。
これ以外にも本書には「ニコニコ動画」の制作秘話や、ドワンゴ創業時の知られざるエピソードなどが満載です。同社のサービスが好きな人なら、興味深く読み進められるでしょう。
「ルールを変えよう」「競合だらけのレッドオーシャンから、ブルーオーシャンに逃げだそう」・・・いろんなビジネス書で、異口同音にこんな説明が並びます。でも具体例に乏しかったり、文章が難解だったりで、手が伸びにくい書籍が多いのも事実。そんな中で本書は希有な存在ではないでしょうか。ビジネス書として万人にお勧めですが、特に就活を目前に控えた大学生に読んでもらいたいところです。
(小野憲史)