どこからどこまでがフェティシズムなのか大事典
以前、友人から「食べ物を踏みつけるAVがある」という話を聞いて、一瞬何を言っているのかわかりませんでした。
それ裸で踏むとかそういうこと? いや違う普通に食べ物を踏むアダルトビデオ。
よくわからなかったので検索してサンプルを見たのですが、やっぱりわかりませんでした。
服を着たお姉さん達が、並べられた食べ物をぐしゃぐしゃと踏んづけて歩く。終わり。
「フードクラッシュ」というジャンルで、その手のフェチの人には18禁でしょうけど、一般的には食べ物もったいないね動画でしかないです。
ただ、正直ね、ちょっとね、むずむずした。
『本当に正しいフェティシズム 性的嗜好大事典』は、古今東西、ありとあらゆる性的嗜好・フェティシズムを集めた事典です。
意外となかったのです、こういうの。
というのも「どこからどこまでがフェティシズムなのか」がわかりづらいから。
マゾヒズムや盗撮のようなわかりやすいものから、機械姦や巨大娘のようなファンタジーめいたものまでわんさか載っています。
イラストもあり、説明も詳細。それらが描れているAV・マンガ・小説なども載っているので、ぺらぺらめくるだけで楽しいです。
さて、この本が最もすごいと感じたのは、「異性愛者」もフェティシズムの項目に入っていることです。
「異性を性的な、あるいは恋愛の対象と見なす」……ん? 普通ですね。
でもそうだろうか。普通とはなんだ。
この本ではフェティシズムを「精神的病理」とは捉えていません。
「見る、触れる、あるいは想像することによって、心に変化をもたらしてくれる「何か」だ」
「その「何か」が感情の変化、特に性的な興奮をもたらしてくれる効果があるように「思える」点にある」
これらをまとめて、この本では「フェティシズム」と考えています。
例えば、お守りは身につけていると安心します。持っていることで必ず何かが起きるわけじゃない。けれども「何か」があるように「思える」。だから持ち歩きたいと考える。
性も同じ。たとえば異性愛者の場合、男性なら女性に触れることで性的な興奮をするように「思える」。
同じように、同性に触れることで性的興奮を得て安心する人もいます。おしっこに触れることで性的に燃える人もいれば、脚を見ることで心の平安と興奮を手にする人もいる。
全部並列扱いで、セクシャル・マイノリティという言葉がありません。この考え方で書かれているのが面白い。
人間みんな、フェチなのです。
書かれているフェチから、いくつかご紹介します。
●制服フェチ
ぼくのことかな。
メジャーなフェティシズムで、一時期はブルセラなんかもありましたが、そもそもなぜ制服フェチになるかが問題です。年齢フェチなら、別にその年の女の子の普段着でもいいわけですが、そうじゃなくて制服。
制服は、「何をしている人間か」が分かる差別化を持ちつつ、性的な連想をさせる記号です。軍服やセーラー服は最たるもの。このへんが詳しく解説されているので読んでみてください。
●体内侵入
空想フェチズムの一つ。相手の性的対象の体内に入り込むことで性的な興奮を得る、というものです。
ドラえもんとかで、しずかちゃんに飲み込まれるのを見て興奮した人はこれにあてはまります。
なお、どうしても実現したい人のためのアイテム、それが「内視鏡」。ご利用は計画的に。
●くすぐり責め
広義で言えば拷問・虐待の一種。犯罪ではない状態で、相手を呼吸困難にして、合法的に苦悶の表情を見ることができる、という塩梅。これは色々なAVも実際出ています。
どちらかというと、ルパン三世で峰不二子のくすぐり責めを見て、芽生えた人が多いかもしれません。マンガ・アニメだと多いです。
●死体性愛
ネクロフィリアと呼ばれるもので、死体との性行為のこと。「それはだめだよ」と言いたくなるところですが、カリフォルニアで2004年にやっと明文で禁止されているそうで、考えてみたら当たり前すぎて明文化されづらいものかもしれません。
現実の犯罪事件としても多い性癖なので、項目を読む時はお気をつけて。
●窃触
痴漢行為のこと。気付かれずに触りたい、という行為全般。
どうしても日本だと、痴漢といえば満員電車、というイメージですが、それだけではないです。でもやっぱり電車で痴漢でしょう。
精神科を訪れて性的倒錯としての痴漢・窃触愛好を治したい患者さんめっちゃ多いそうです。うーんツライ。
●人型愛好
人形フェチ・ロボットフェチのこと。
わかりやすいのはオリエント工業製のラブドール。ラブドールのデリバリーヘルスなんかも実際あるんです。
エロいフィギュアもいっぱい販売されていますし、「魔改造(フィギュアの服を脱がす改造)」なんて言葉も。
またASFRと呼ばれるロボットフェティシズム。SFイメージ的な論争になりますが、セクサロイド妄想は昔からあるものです。
●固形化
人間が彫像になってしまう、凍らされる、平面に閉じ込められるなどなど。何かの要因で無機物になるシチュエーションです。
当然固まっているのでセックスはできません。眺めたい、というフェチ。
現実には不可能ですが、これを創作として突き詰めると実に深い。
その他にも、空想だからできる攻撃的なものや、犯罪的なものから、即プレイ可能なものまで、性的嗜好が山ほど載っています。ちょっとここでは説明できないものもたくさんあります。
全てフラットに、並列に載っています。人によっては苦手なジャンルもあると思いますので、そこは読む際くれぐれもお気をつけください。
人間はどのような幅まで性的嗜好を持っているのか興味がある人、今後作品作りにバリエーションを持たせたい人、性とは一体どういうものなのかを考えたい人にはもってこいの事典です。
文字が小さくて余白少なめにギュウギュウに詰まっているのは、ちょっと昔のサブカル本みたいで懐かしい感じでした。
読み終えて一番ぼくが感じたのは谷崎潤一郎と江戸川乱歩は、ほんと天才なのだなということでした。
『芋虫』とか『痴人の愛』とか、今読んでもやっぱりすごい。
『本当に正しいフェティシズム 性的嗜好大事典』
(たまごまご)
それ裸で踏むとかそういうこと? いや違う普通に食べ物を踏むアダルトビデオ。
よくわからなかったので検索してサンプルを見たのですが、やっぱりわかりませんでした。
服を着たお姉さん達が、並べられた食べ物をぐしゃぐしゃと踏んづけて歩く。終わり。
「フードクラッシュ」というジャンルで、その手のフェチの人には18禁でしょうけど、一般的には食べ物もったいないね動画でしかないです。
ただ、正直ね、ちょっとね、むずむずした。
意外となかったのです、こういうの。
というのも「どこからどこまでがフェティシズムなのか」がわかりづらいから。
マゾヒズムや盗撮のようなわかりやすいものから、機械姦や巨大娘のようなファンタジーめいたものまでわんさか載っています。
イラストもあり、説明も詳細。それらが描れているAV・マンガ・小説なども載っているので、ぺらぺらめくるだけで楽しいです。
さて、この本が最もすごいと感じたのは、「異性愛者」もフェティシズムの項目に入っていることです。
「異性を性的な、あるいは恋愛の対象と見なす」……ん? 普通ですね。
でもそうだろうか。普通とはなんだ。
この本ではフェティシズムを「精神的病理」とは捉えていません。
「見る、触れる、あるいは想像することによって、心に変化をもたらしてくれる「何か」だ」
「その「何か」が感情の変化、特に性的な興奮をもたらしてくれる効果があるように「思える」点にある」
これらをまとめて、この本では「フェティシズム」と考えています。
例えば、お守りは身につけていると安心します。持っていることで必ず何かが起きるわけじゃない。けれども「何か」があるように「思える」。だから持ち歩きたいと考える。
性も同じ。たとえば異性愛者の場合、男性なら女性に触れることで性的な興奮をするように「思える」。
同じように、同性に触れることで性的興奮を得て安心する人もいます。おしっこに触れることで性的に燃える人もいれば、脚を見ることで心の平安と興奮を手にする人もいる。
全部並列扱いで、セクシャル・マイノリティという言葉がありません。この考え方で書かれているのが面白い。
人間みんな、フェチなのです。
書かれているフェチから、いくつかご紹介します。
●制服フェチ
ぼくのことかな。
メジャーなフェティシズムで、一時期はブルセラなんかもありましたが、そもそもなぜ制服フェチになるかが問題です。年齢フェチなら、別にその年の女の子の普段着でもいいわけですが、そうじゃなくて制服。
制服は、「何をしている人間か」が分かる差別化を持ちつつ、性的な連想をさせる記号です。軍服やセーラー服は最たるもの。このへんが詳しく解説されているので読んでみてください。
●体内侵入
空想フェチズムの一つ。相手の性的対象の体内に入り込むことで性的な興奮を得る、というものです。
ドラえもんとかで、しずかちゃんに飲み込まれるのを見て興奮した人はこれにあてはまります。
なお、どうしても実現したい人のためのアイテム、それが「内視鏡」。ご利用は計画的に。
●くすぐり責め
広義で言えば拷問・虐待の一種。犯罪ではない状態で、相手を呼吸困難にして、合法的に苦悶の表情を見ることができる、という塩梅。これは色々なAVも実際出ています。
どちらかというと、ルパン三世で峰不二子のくすぐり責めを見て、芽生えた人が多いかもしれません。マンガ・アニメだと多いです。
●死体性愛
ネクロフィリアと呼ばれるもので、死体との性行為のこと。「それはだめだよ」と言いたくなるところですが、カリフォルニアで2004年にやっと明文で禁止されているそうで、考えてみたら当たり前すぎて明文化されづらいものかもしれません。
現実の犯罪事件としても多い性癖なので、項目を読む時はお気をつけて。
●窃触
痴漢行為のこと。気付かれずに触りたい、という行為全般。
どうしても日本だと、痴漢といえば満員電車、というイメージですが、それだけではないです。でもやっぱり電車で痴漢でしょう。
精神科を訪れて性的倒錯としての痴漢・窃触愛好を治したい患者さんめっちゃ多いそうです。うーんツライ。
●人型愛好
人形フェチ・ロボットフェチのこと。
わかりやすいのはオリエント工業製のラブドール。ラブドールのデリバリーヘルスなんかも実際あるんです。
エロいフィギュアもいっぱい販売されていますし、「魔改造(フィギュアの服を脱がす改造)」なんて言葉も。
またASFRと呼ばれるロボットフェティシズム。SFイメージ的な論争になりますが、セクサロイド妄想は昔からあるものです。
●固形化
人間が彫像になってしまう、凍らされる、平面に閉じ込められるなどなど。何かの要因で無機物になるシチュエーションです。
当然固まっているのでセックスはできません。眺めたい、というフェチ。
現実には不可能ですが、これを創作として突き詰めると実に深い。
その他にも、空想だからできる攻撃的なものや、犯罪的なものから、即プレイ可能なものまで、性的嗜好が山ほど載っています。ちょっとここでは説明できないものもたくさんあります。
全てフラットに、並列に載っています。人によっては苦手なジャンルもあると思いますので、そこは読む際くれぐれもお気をつけください。
人間はどのような幅まで性的嗜好を持っているのか興味がある人、今後作品作りにバリエーションを持たせたい人、性とは一体どういうものなのかを考えたい人にはもってこいの事典です。
文字が小さくて余白少なめにギュウギュウに詰まっているのは、ちょっと昔のサブカル本みたいで懐かしい感じでした。
読み終えて一番ぼくが感じたのは谷崎潤一郎と江戸川乱歩は、ほんと天才なのだなということでした。
『芋虫』とか『痴人の愛』とか、今読んでもやっぱりすごい。
『本当に正しいフェティシズム 性的嗜好大事典』
(たまごまご)