菅野有佑投手(札幌南)

強かに、相手投手を少しずつ崩す!

札幌勢同士の対戦となった第2試合は、前半4回まで0対0。札幌大谷・岡本 凜典(1年)と、札幌南・菅野有佑(2年)の投手戦で試合は進んだ。しかし5回、札幌大谷は二死一、二塁から2番工藤幸介(1年)がレフトへヒットを放ち、1点を先制。続く3番で主将の高橋由大(2年)、4番岡本とタイムリーが続き一挙に4点を奪った。さらに6回にも満塁から高橋の走者一掃二塁打などで4点を追加して8対0。一気にコールドゲームへの流れに持っていった。投げては岡本が6回途中まで投げて4安打1失点。その後を左腕の須田敦也(2年)が抑え、7回で試合を終わらせた。全道初出場で1回戦から勝ち抜き3勝。もちろん初めてのベスト4進出となった。

「正直、ベスト4(進出)という感じはないです」と五十嵐友次郎監督は一戦必勝での結果という気持ちを話した。

5回の4点へと繋がった流れ。4回までは札幌南の左腕・菅野有に一見するとうまくピンチを凌がれているという印象を受けるが、その中でもしっかりと攻略への布石を打っていた。

「菅野(有佑)君は球のキレが良かったので中々打てないと思っていました。ストライクとボールの見極めをしっかりとしなさいと選手に指示しました」と五十嵐監督。言葉の通り、無安打に終わった1回に22球を投げさせるなど、球数を多くさせることに徹した。4回を終わって71球。初球で終わったのは4回先頭だった工藤だけ。>その工藤が、攻略への次のステップである仕掛けをしている。それが初球を三塁前へ転がすバント。結果はサードゴロに終わるのだが、札幌大谷サイドが見せたシグナルであった。

多用したバント(札幌大谷)

そして5回、攻略の意図がはっきりとする。先頭の7番島田淳史(2年)が一塁よりにピッチャーへ捕らせるようにバントで転がした。処理をした菅野有だが、ファーストへの送球が高くなってしまいセーフ。相手のミスで札幌大谷が先頭打者を出塁させた。

「ミスでランナーが出て、攻め時はここだと思いました」(高橋主将)。

続く8番原井信吾(1年)が1球で送りバントを決めて得点圏へ走者を進める。9番添川慶太(1年)は2球目を打ってライトフライに倒れるが、1番鵜野翔真(2年)は初球が体に当たって死球となった。この間、わずか5球。布石を打つ段階だった4回までとは明らかに攻撃パターン。マウンドの菅野有は、明らかにリズムが崩れかけていた。

そして2番工藤が1ボールからの2球目をタイムリー。高橋も1ストライクからの2球目で続いた。そして4番岡本は一転してファウル2球で球を見極めた上で、この回のトドメとなるタイムリー二塁打。一挙4点がこうやって完成した。

「バントからの攻撃は、力を入れてきた。ウチは予想通りの展開。あの回は集中力があったと思います」と選手を讃えた五十嵐監督。高橋主将も、「前半最後の攻撃だったので、まず1点を取りたかった」としてやったりの様子で話した。

札幌大谷は6回も、無死一塁から三者連続でバント。失敗あり、相手ピッチャー・菅野有の処理ミスあり、内野安打ありと三者三様だったが、チャンスを広げて高橋の一打へと繋げている。「このチームが始まってから、“大切にする六つのこと”があって、その一つに状況に応じたバッティングというのがあります。状況と相手の守備」と練習からこういったケースを意識していることを話した高橋主将。

0行進の中にも、強かに、じっくりと攻略の糸口を広げていった札幌大谷。全道初出場ながら、今大会を象徴する存在になってきた。

(文=編集部)